2013年8月3日、4日の、A Bubble Circus 2013年度夏公演「消えた琥珀のシャンデリア」の報告をしていきます。
A Bubble Circusの公演は、諸々ひっくるめて今回が7作品目となります。
その中で、東山青少年活動センターの劇場を借りて行ったのが今回が5回目。
特に、東山フェスタという夏のお祭りの中で行ったのは今回が3回目です。
観客動員数は63人。昨年よりは増えた感じです。
多くて80人程度を予想していたので、1日目が終わった後にあわててパンフレットを刷り足すこととなりました。
それでは以下、ひとつひとつの演目を振り返って行きたいと思います。
~前説~
前説は、恐竜みたいな名前のDVDで有名なあの人です。
思わぬビッグネームの直前での起用となりましたが、快く前説を務めて下さいました。
演目はアクロバティックノット(ジャンピング・ノット・オブ・パキスタン)でした。
この方はコインマジックのスーパーマニアのイメージが強いのですが、実際に子どもが多い環境でのサロンマジックを見させて頂くと、間の取り方や観客の惹きつけ方、場の空気の掴み方などがとても上手で、「すごく手品が上手い人」なんだなぁと感じました。学ぶところが多く、勉強になりました。
~マスク~
本編の主人公「怪盗ロジャー」の予告状が読み上げられた後、ロジャー役の演者によるマスクの演技がありました。
マニピュレーションベースでもなく、変面(変臉)ベースでもない、新しいタイプのマスクアクトでした。
ストーリーベースとでも言うべきでしょうか。「百面相」というか「あるときは○○、またあるときは××」といった雰囲気を体言化している独特のアクトとなっていました。
ストーリーとの兼ね合いもあり短めのルーティーン構成をお願いしていたのですが、またこの方向性を伸ばして独自のマスクの演技を作っていって欲しいなと思いました。
~ゾンビボール~
ストーリー部分があった後、場面は街の大金持ちエバンスのコレクションショーに移ります。
トップバッターはゾンビボール、舞台での演技は3度目となるアクトです。
非常に安定感があり、不思議な演技でした。
ゾンビボールだけでここまで魅せられる演者はなかなかいないと思います。
お客さんの「盛り上がり」といった意味ではそこまで賑やかではない演技ですが、ゾンビボールという演目の持つ良さをしっかり引き出せていたと思います。
フットワークも軽いアクトなので、今後いろいろな所で演じて腕を磨いていって欲しいと思います。
そうすれば、彼の代名詞となるアクトになるでしょう。
~タンバリン~
今回の最年少、前回の公演で前説を務めてくれた演者の起用です。
彼女はチャイナリング、ファンプロダクションと演目を経験してタンバリンには今回が初挑戦です。
舞台上に隠れている部分(捨て場や幕のかかったテーブルなど)がほとんど無い、大黒幕までがツーツーで見えている状態でのタンバリンなので、非常に不思議でした。
クライマックスはのべシルクの滝だったのですが、その前のペーパーガーランドの出現が一番盛り上がっていたのが印象的でした。
立ち方や示し方など、まだまだぎこちない部分も多く見られたのですが、手品を始めてまだ1年、昨年からの成長も大いに見られる演技で、今後が楽しみです。
指導に当たってくれた上回生たち、また隠れている部分無しでのルーティーン構成のアイデアを下さった、同志社大学マジック&ジャグリングサークルHocus-Pocus顧問のまげっとさんにも感謝です。
~ゴジンタボックス~
街の大金持ちエバンス役の演者によるゴジンタボックスです。
ボックスの中からシルクやくす玉などが出現するプロダクション要素を多く含んでいるため、アリ・ボンゴのアレンジと言うか、あるいはテンヨーのパンドラボックスと言った方が近いかもしれません。
サロンとステージの中間的演技という位置づけで演じられるユニークなスタイルです。
BGMの歌詞がある部分では音量を下げて喋り、サロンマジックのスタイルで演じます。
しかしひとたび間奏に入ると音量が上がり、曲に合わせてノリノリでステージマジックのスタイルに変わります。
また歌詞の部分に入るとBGMの音量が下がり、サロンのスタイルになります。
これらを、1打点も狂わずに完璧に曲に合わせて演じきるという、なかなか難しいアクトでした。
しかしながら彼は全く狂い無く、最後のキメの打点まで完璧に演じ切れていました。センスと練習量の賜物だと思います。
ゴジンタボックスという演目自体が子どもには分かりにくく、外箱と内箱が入れ替わる不思議さや、不条理性を盛り込んだ口上がしっかりと伝わったかというと疑問です。
しかしながら、最後のくす球2連発などプロダクション要素を上手く取り入れることで、小さな子どもにも楽しんで貰えたようで良かったです。
それで果たして、ゴジンタボックスという演目の見せ方として本当に良いのか、というのは彼自身もずっと悩んでいましたが、ひとつの結論となるアクトだったと思います。
まだ打点を合わせようとしている感は拭いきれていないので、今後いろいろな所で演じていく中で、このアクトを完成された演技へと磨き上げていって欲しいです。
~ミリオンカード~
前回のミリオンカード演者、引き続きミリオンカードでの起用です。
同じ演目ですが、手順はまるっきり異なります。エバンスのコレクションを見せるショーということで、あくまで「不思議なトランプ」という演出であり、演技を作る上でも苦労させてしまったなと思っています。
今回のコンセプトは1枚も散らかさないミリオンカードです。
捨てるカードは全て、捨て場のトップハットに入れます。
半袖の衣装も、ミリオンカードの不思議さを引き立たせています。
彼としては、曲に合わせるというのもひとつのチャレンジだったかと思います。
しっかりと曲にはまっていて、それでいて雰囲気を壊さず良い演技ができていました。
やはりそもそもの技法が鬼のように上手く、またステージの立ち方や示し方もしっかりしているので、単純に見ていて不思議なマジックだと感じました。
また、散らかさないという縛りの元では噴水カードなどができないので、クライマックスエフェクトはなかなか悩まれました。
両手のファンを示した後、それらをトップハットに捨てるのですが、1枚だけ残します。その1枚を消し、完全にないことをじっくり示した後の出現、そしてその瞬間、カードが5枚に分裂して5本の指先に大きくディスプレイされます。コインなんかでよく見るディスプレイですね。
これが本当にクライマックスエフェクトになるのか若干不安でしたが、このアクトで最も歓声が上がったのがクライマックスの5枚ディスプレイだったので、成功したと言えるでしょう。
「1枚も散らかさないミリオンカード」の秘めたる可能性を見ることができ、勉強になりました。
~シカゴの四つ玉~
マリオネットのパントマイムから自分で糸を切り、自由になるところから始まる四つ玉アクトです。
実に6年前の演技の再演です。ちょくちょく色々な所で演じていたので、6年ぶりというわけではないです。
パントマイムやジャグリング、バルーンなんかを扱う場面がちょいちょい出てきて、やっていて楽しい演技です。
年季の入ったアクトだけあって、落ち着いて演じられたと思っています。
やはり世界観やキャラクターが小さな子どもには伝わりにくいこともありましたが、ラストでボールが7つに増えるので盛り上がりはそこで持ってくることができました。
アンケートでも好評で、良かったと思います。
~シンブル~
今回初めて舞台でご一緒することができた、関西フラワーシンブルの代表的な演者です。
いつもは色がモチーフとなって、花とシンブルのカラーチェンジが入り乱れる演技なのですが、今回はエバンスのコレクションショーという位置づけなので、シンブルを「不思議な道具」として扱う演出で演技して頂きました。
中ほどで行われる、
赤シンブルが4本に増加、そこから赤い花の出現
↓
シンブルが1本ずつ黄色にカラーチェンジし、4本の黄色シンブルに
↓
その手で花をなでると黄色にカラーチェンジ!
の流れが手際よく行われ、非常に鮮やかでした。
クライマックスには4本のカラフルなシンブルを示し、そこからカラフルな花束が出現します。やはりそこがかなり盛り上がっていたように感じます。
技術的にもかなり巧みで、そして存在感のある個性的な演者なので非常に楽しい演技でした。
カラーチェンジの色のチョイスについては、見えにくいといった声もちらほら聞きました。ただでさえシンブルは見えている面積が小さくカラーチェンジがわかりにくいため、ステージでのカラーチェンジには不向きです。
特に色弱の方にとっては、赤から緑のカラーチェンジは全く分からなかったと思います。
色のチョイスを再考すれば、さらに良い演技になると思いました。
~ジュエリー~
ストーリー部分があった後、トリの演技はジュエリーです。
「琥珀色のシャンデリアさえ出してくれれば良いから。」と指示していたのですが、がっつりとジュエリーのアクトを構成し、演じてくれました。
指輪の出現部分ではなかなかマニアックなマニピュレーション技法も用いられていて、元ミリオンウォッチ演者の貫禄が見られました。
ジュエリーといえば京都大学の演目なのですが、京都大学奇術研究会OBのメンバーからも絶賛されるほどの綺麗な造型で、ラストのシャンデリアの出現は圧巻です。
ここがコケるとストーリー全体が台無しになるぞと、内心ハラハラしていたのですが、シャンデリアが出現したときに、客席から子どもの声で
「よかったね。」
「シンデレラ出てきたね。(たぶんシャンデリアのこと)」
と聞こえてきたようで、ストーリーに上手くオチをつけてくれたようです。
~まとめ~
毎回、東山フェスタのマジックショーでは言えることなのですが、お客さんの大半が地域の親子連れさんで、マジシャンや手品に関係する人が客席にかなり少ないです。なので、学生マジックなんかでウケるポイントと、今回のマジックショーでウケるポイントはかなり違ってきます。
プロダクション演目で大きいものが出たら歓声が上がりますし、マニピュレーションでも一番盛り上がるのはクライマックスで大きい現象が起きたときでした。
演技の最後にでかい物を出せば良いとまでは思いませんが、お客さんに喜んで頂く演技を作るためには、どこに重点を置いて演技を構成すれば良いのか、お客さんの目の付け所はどこなのか、今一度考えさせられる公演でした。
無事に終わってホッとしています。
来年もまた東山フェスタでストーリー仕立てのマジックショーをやりたいと思っていますので、その時はぜひご来場ください。
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