福田庸太さんのレクチャーDVD「トリックサウルス」を購入しました。
収録されている作品やムーブについて、レビューしたいと思います。
レビューの前に、まず福田庸太さんと言えば、世代的には僕の1つ上に当たる学生マジシャンさんです。 第3回アンタイトルドコンサートではご一緒に出演させて頂きました。
僕が大学1回生のとき、まじっくうえぽんの交流会でコインのお話しを色々したのを覚えています。
僕は、コインマジックってなんだか地味で、何がしたいのかよく分からなくてあまり好きでないというお話をしました。すると福田さんはしばらく黙り、おもむろにコイントスをしました。そして何回目かのコイントスの時、そのコインが跳ね上がる最高地点で福田さんはコインをガッと掴み、
「ここ!ここなんです!ここでコインが消えてなくなったら、すごく不思議じゃないですか?僕は、コインマジックでそれを目指しています。」
とおっしゃいました。
福田さんの哲学をしっかりと理解できたワケではありませんが、本当にコインマジックが好きで、そこに何かしらの哲学を追い求めている人なんだなぁと感動したことを覚えています。
あれから6年。再び福田さんの哲学に触れることができることにウキウキしながら、このDVD「トリックサウルス」を再生しました。そして感じたことを、レビューという形で書いていきたいと思います。
● Disc1 ●
・ワンコインルーティーン
移動現象や貫通現象が鮮やかなワンコインルーティーンです。
やはりワンコインルーティーン独特の、パッパッと現象が起こってしまって何をしているのか分からない感じは拭えないと感じましたが、細部まで綿密に構成された美しい手順でした。
・スペルバウンド
怒涛の変化現象が爽快なスペルバウンドです。
先ほどのワンコインルーティーンでもそうだったのですが、見ている側が注意の先をほとんど動かさなくても良いというのがすごい特長だと思います。割とぼーっと見ていても楽しめる、そんな現象だと感じました。
・コインズアクロス
3枚のコインが移動する現象なのですが、こちらはここまでの2つの演技とはまた雰囲気が異なり、視線の移動が心地よい演技です。
テーブルの上という領域と、演者の前の空間を視線が行ったり来たりします。
使用している技法に特徴的なものが多く、手順を追うことで色々な技法の練習になると思います。
・上津野橋ディスプレイ
手をパーに開き、お客さんが手の甲から見て指の隙間から向こう側が覗ける状態から、その指の隙間にパッとコインが出現する技法です。
む……難しい……
うまく決まると恐ろしく鮮やかなのですが、かなり練習がいりそうです。
ハンドリング自体は簡単なのですが、実戦投入まではほど遠そうでした。
でも、やってみたくなる技法です。
・アナザー・ヒンバーバニッシュ
マジシャンキラーな技法、ヒンバーバニッシュのサッカートリックです。
見事に引っかかりました。
マジシャン相手に演じない時にわざわざ使うかと考えると、意外と使えると思います。
コインの手順を組むときって、「今この状態から、コインを消して、そしてこの状態にもって行きたいんだけど、さてどうしよう。」って考えて、使う技法を選ぶことが有るじゃないですか。そう考えたとき、この技法はスパイダーバニッシュに取って代わるより鮮やかな方法だと思います。なので、意外と重宝する技法かもしれません。
・岩おこし
フィンガーパームからスペルバウンドポジションにポジションを移す手法です。
割と簡単で、ちょっとやってみるととりあえず出きるようになります。
そして、あとは手遊びのつもりでだらだらと練習していれば、きっとできるようになると思います。
汎用性も高いような気がするので、ぜひ習得したい技法です。
● Disc2 ●
・スリーコイントリック
ハンギングコインです。すごく好きです。一部ごちゃごちゃっとしている印象も有りましたが、全体を通してスッキリしたプロットで、ぜひ演じたいと思える作品でした。
ハンギングコインはピンと来る作品が有ればぜひレパートリーに加えたいと思っていたので、ちょっと練習してみようと思うのですが、うーん、なかなか大変そうです。
・裏スリーフライ
後ろ向きで見せるスリーフライです。
すごくマニアックです。やろうとは思わないですが何度も見たくなる演技ですね。
福田さんにお会いしたらぜひ生で見せてもらいたいです。
・千鶴子のために
マジシャンが後ろをむいている間に、想像上のコインをお客さんに握ってもらい、どっちの手に握ったかを当てるという演技です。
即席手品なのですが、やってみたら、僕にはできませんでした。ちょっと生まれ持った体質が原因なので仕方ないです。
・4枚のとらんぷ
3枚のカードでマジックをしようと思っても、どうしても3枚にならないというカードマジックです。
見た目にスッキリしていて、ハンドリングも意外とシンプルで、見た目にフェアです。
これはぜひ練習してレパートリーに加えたいと思いました。
めっちゃ良い作品です。おもしろいです。
● Disc3 ●
・ジャンピングダイヤ
有名なトリック、ジャンピングダイヤのオリジナル手順です。
まず、筋が通っています。これは素晴らしいです。そしてテーブルを使うのが独特でおもしろいと感じました。
ただ、意外と演じるのは難しいと思います。でも、筋の通し方や見せ方、示し方を参考にして、ジャンピングダイヤの別の手順に応用できると感じました。
この手順をそのまま演じてもすごく良いと思いますが、そうでなくても一件の価値有りです。
・水漏れと油漏れ
オイルアンドウォーターです。
現象が盛りだくさんでオチまでありながら、見た感じにはシンプルでごちゃごちゃしていない、そしてレギュラーカードでシンプルに自分のアクトに取りこめる、非常に使い勝手の良いオイルアンドウォーターだと思います。
僕はオイルアンドウォーターは好きではないのですが、実はこの原型みたいなものを実際に福田さん見せて頂いたことが有り、その時は「ああ、こういう方向性ならアリかも知れないな」と思っていました。
でも、水漏れと油漏れの手順を活字で読みながら追ったときは「なんか違う、前の福田さんの手順の方が良かったなぁ」と感じていたのです、しかしそれは単に僕が下手だったというだけであって、実際に福田さんの演技動画を見てみると、福田さんの手順の正当な進化型だと感じることができました。
素晴らしい手順です。奇術探求で水漏れと油漏れを読んで知ってるという方もぜひ一度演技動画を見てほしいと思いました。
・Fオービタル・ムーブ1
カードをデックに挟んでクルッと回すと変化するという技法です。
そこまで難しくはないのですが、実戦投入するかというと微妙です。
おまけ技法だと思って楽しむと良いかもしれません。
・Fオービタル・ムーブ2
複数枚で行うFオービタル・ムーブです。
こっちは、そう簡単ではないです。
でも、実戦で必要性が出てくるのはこっちじゃないかなあと思います。
僕は、しばらく使う機会はなさそうです。
以上、トリックサウルスのレビューでした。
6年前はまじっくえぽんの交流会で、寝ている参加者さんの方にカメムシを全力で投げつけていた福田さんですが、そんないたずら好きな心のまま凄いマジシャンへとレベルアップしていて、本当に楽しむことができました。
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