2013年5月22日水曜日

レビュー「第8回アンタイトルドコンサート」


2011年12月23日に行われた、第8回アンタイトルドコンサート
「衝撃とのハチ合わせ」の感想です。



なんだか方々から「アンタイの辛口レビュー書くんですか?」って聞かれるんですが、別に僕は辛口レビューを売りにしてるワケじゃないです。

1:和妻(関西大学)



実は開演に間に合わず、この演技だけ見られませんでした。
DVDを楽しみにしています。


2:四つ玉(大阪大学)


ものすごく安定したスライハンドの演技でした。
手順もシンプルにすっきりしていて、見ていて心地よいボリュームでした。
ゴテゴテの学生マニピュレーションに慣れている人にとっては物足りないのかもしれません。
今演者が何をしているのか、一つ一つ丁寧に伝えようとする姿勢。僕は好きです。

曲にはある程度合っていたのですが、なんせこの次が龍谷大学のウォンドです。
龍谷のウォンドがありとあらゆる打点にバシッと合っていたので、ここを並べると酷だと感じます。


3:ウォンド(龍谷大学)


龍谷大学としては異例の、演技での出演です。
学生っぽいウォンドをしながらも遊び心を忘れない演出は、Mist創設者の風格をまとっていました。
今回は彼が今まで演じてきた舞台と比べれば大きい舞台ですが、アンタイの歴史上では比較的小さめの会場でした。
ウォンドのカラーチェンジなんかは非常に見にくくなりがちな現象なのですが、
会場も幸いして、またとても工夫された見せ方で非常にわかりやすかったです。

曲について色々有ったのですが、まあ曲に負ける演技ではなかったかなと思います。


4:マスク(鳥取大学)


仮面のマニピュレーションから、伝統的な変面(變臉)に近いことまで行う、マスクの演技です。
舞台での立ち回りがあまり上手くなく、1回生か新入部員かな、と思う演技でした。
素敵な衣装で見た目に華やかだった分、それに演技が負けていた印象です。
そのせいもあってか、全体的に地味に感じられた演技でした。


5:ディアボロ(高知大学)


ジャグリングはあまり分からないのですが、1個のディアボロでこれだけ会場を沸かせるのはすごいと思います。
曲と演技が途中で切れて、また再スタートする演出だったのですが、
「え、まだあるの……?」と、ちょっとお腹いっぱいになる演出だと思います。
前半は前半で、後半は後半でおもしろかった分、その演技の分離感がちょっぴりもったいなかったです。


6:グラス(京都大学)


京大で見た時は、非常に優雅に舞台を使い、小劇場より大舞台でこそ映える演技だと思っていました。
しかしながら大舞台で見てみると、舞台上の小さな世界をせせこましく使っていたため、
あんなにタッパの有る演者が非常に小さく見える立ち回りでした。
世界観や作りたかった空気感も、京大の時はよく分かったのですが……
今回の舞台では、いまひとつ何がしたかったのか分からない演技になっていたと思います。
持っているものは大きいと思うのですが、大舞台に慣れていないのでしょう。残念な演技でした。
3月に行われる京大の学外発表会に期待しています。


幕間1(名古屋大学)


サロンを行っていました。幕間の意味を完全に取り違えていたと思います。
喋り方、間の取り方、現象の伝え方等々、もう一度しっかり考え、必要ならば勉強し直した方が良いと思います。
手品自体も、現象は起こっていたのですが、冗談の部分がゴテゴテしすぎて不思議なのかどうかいまいち分かりません。
見ていて、かえって疲れました。


7:シガレット(名古屋大学)


女性のセクシーなシガレットです。
キャラクターがいまいち降りていないため、学生のおねーちゃんが無理してるようにしか見えませんでした。
そもそもキャラクターが固まっていなかったのかもしれません。
そこをクリアして、しっかりキャラクターを降ろすことができれば、非常に素敵な演技になると思います。
テクニックは凄かったのだと思いますが、この大きさの舞台ではそれもいまいち分かりません。
というか、現象が見えるかどうかもギリギリ、僕の視力ではギリギリアウトでした。
ちょっと舞台の大きさには合わなかったかなという印象。
キャバレーの一角に有るような半円状のステージでこの演技を見ると、とっても良いと思います。


8:カード(大阪大学)


色鮮やかなカードでタワーを作っていく、ミリオンカードの演技です。
ちょっと意味が分かりませんでした。
ストーリーと言うか、設定がついた演技にもかかわらず、その設定が分かりません。
主人公が何を目的としてカードを出しているのかが分からず、最後まで意味不明です。
多分、色のカードでタワーを作りたいけれども上手くできず、色の違うカードが混じったりして、それを徐々に何とか直したりしながら、タワーを完成させる、というストーリーなのだと思いますが……
そのストーリーが、そもそも気持ち悪いです。主人公がちょっと変だとしか思えません。
設定をつけるなら、意味や理由づけをちゃんとして欲しいです。
そうでないなら、何の設定もつけずに色のカードでミリオンカードをしてくれた方がおもしろいと思います。


9:ポイ(近畿大学)


花火にちなんだライトポイでした。季節感……
ライトポイで花火を表現するのはいいのですが、最後にホリゾント幕へ花火を投影するのはどうかと思います。
そうしてしまうと、そこまでジャグリングで表現してきた花火がすべて台無しになってしまいます。
とても綺麗な演技だっただけに、最後のシーンで興ざめしてしまい、残念でした。

マジックショーと銘打っていう公演に、当然のようにジャグリングが入っている段階で何かがおかしいのですが、
ジャグリングが2つあるのはもっとおかしいです。演者選出の段階で、誰もおかしいと思わなかったのでしょうか?
全体構成の中でも、手品の間で当然のようにジャグリングが始まるのは違和感があります。
「次はマジックじゃないよ。」というアナウンスを入れるか、
前もって「マジック以外も有るよ。」と告知するなど、配慮すべきでしょう。
初めてマジックショーを見にきたお客さんに、変な影響を与えてしまいそうです。


10:CD(同志社大学)


非常に軽快で楽しいCDの演技でした。
技術面では粗が目立つものの、演者の雰囲気や曲との合わせ方でとても楽しむことができました。
初めからお客さんに手拍子を求めることで第4の壁を取り払った上で演じるというのは、同志社らしい非常に良いアイデアだと思います。
学生のCDというとスライハンドゴリゴリのフラリッシュみたいな演技か、ひたすら数を出す演技か、中途半端に設定を付けた筋の通っていない演技ばかりを見ていたので、これは革命的な演出だと思います。
タネが見えてしまう場面やドロップがいくつか有ったので、それさえクリアすれば非常に良いアクトになると感じました。


11:ゾンビボール(近畿大学)


魔法使いと不思議な玉をテーマにした、ゾンビボールの演技です。
ストーリーと曲の合わせ方が絶妙で、非常に楽しかったです。
ゾンビの技術としては1回生の冬レベル、マイムは基礎ができていない感じでした。
しかしながら、そんなことは全く気にならないほどおもしろい演出だったと思います。
オチがちょっと筋を通しておらず、不完全燃焼な感じだったのですが、
音響を上手く使ってインパクトの有る見せ方をしていたのでそれもアリだと思います。

文句なしに楽しい演技だったのですが、どうしても気になった点が1つあります。
ボールが何の支えもなく宙にふわっと浮かぶシーン、舞台上からグォーーーーー!!!っと機械音が聞こえていました。
浮きモノで機械音が聞こえてしまうと、すべてが台無しになってしまうと思います。
そこまでのすべての演技、そこからのすべての演技が、何かしらの機械を使っていたのかな、と思ってしまいそうです。
この演技を行うためには、今回の会場は小さ過ぎたんだろうなと思います。

この辺り、浮きモノと文化に関わることで、同志社OBの佐藤智大氏がベトナムでゾンビボールを行ったとき
「ガスを注入してるんだね。上手く操っていて凄いと思った。」
と言われた、という話に通じるものがあると感じます。
これは学生ゾンビ演者が今後考えるべき1つのテーマになったと思います。


12:ダブ(京都大学)


奇術競演祭でも見た、ハトなどのアラカルトな演技です。
とても華やかで映える演技構成だったのですが、やはりリズム感の無さが気になりました。
この演出でラストがピタッ!と決まらないと、やっぱり締まりません。
若干のズレ、止まるときのブレ、踊っているというよりはカウントを取っているような動き……
手品ではなく、この部分が上手くいけばとても良いエンターテイメントになると思います。
オチについては以前書いた通りです。ハトの難しいところですね。


幕間2(龍谷大学)


漫才です。3連覇。文句なしです。
彼らを超える幕間演者が来年突然現れるとは思えません。
ぜひとも4連覇して欲しいです。


司会(京都教育大学)


弟子です。エントリーしていなかったのですが、抜擢されていました。
委員ではなく、エントリーもしてないのにアンタイ出演した例はほとんど知りません。
僕には聞きなれた話術なのですが、どうやら好評だったようで何よりです。


~全体~


全体を通して、演者一人一人が個性的で、学生としては非常にクオリティの高いショーになったかなと思います。
西日本の学生マジシャンOBに服部圭吾さんという方がいます。
演者の個性を尊重し、大学間で協力する文化を作り、そしてアンタイトルドコンサートの初期を担った服部さんの意志が実りつつある現場を見ることができたと思います。

演者選出の段階で、舞台の大きさは視野に入れる必要が有るかもしれませんね。
具体的には、今回の会場はシガレットの方には大きすぎて、ウォンドの方にはちょうど良く、ゾンビボールの方には小さすぎたと思います。
この3人を選出してしまうと、どんな会場でも誰かが映えない演技になってしまいます。
今後のためにそれだけ、ちょっと気になったので書かせていただきました。

総じて、一言でいうと、西の学生マジックが東の劣化コピーから脱却してきて、本当に嬉しいです。
楽しかったです。この調子で第9回、第10回、第11回……と、末永く応援したいです。

最後に、運営の方で色々大変なことが有ったみたいですが、ここまでショーを引っ張り上げた舞台監督の方、並びに委員の皆様、本当にお疲れ様でした!!


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