2013年5月17日金曜日

最もボードビルに必要なこと



ボードビルの話、第2段。ボードビルに最も必要なことは、「自分でやること」です。


※以前に三畳半工房さんで連載させていただいていたボードビル体験記の再掲です。


~自分でやること~




シカゴの四つ玉でオーディションを受けた私は、その場でいくつかのダメ出しを頂いたものの、とりあえずレギュラーメンバーとしてその日から「ディスイズショウタイム!」の舞台に立つこととなります。この段階では何も分からないままの出演だったのですが、それから何度か舞台を踏むうちに、ボードビルで手品をする上で最低限必要な事というものが何なのか分かってきました。少し専門的な内容となりますが、ここからは私のボードビル出演経験から得たノウハウを少しずつお話ししたいと思います。

ボードビルでの手品に最低限必要なことは、端的に言うと「自分でやること」です。例えば、演技でまき散らした紙吹雪は誰が掃除するのでしょうか?取り出した道具を飾る大きな台は、誰が出してくれるのでしょうか?それ以前に、そもそもそんな台をどこに置いておくのでしょうか?ルーティーンの絶妙なタイミングで音響チェンジ、誰がやってくれるのでしょうか?さらに言うと、自分がマジシャンであることを誰が説明してくれるのでしょうか?
すべて「自分」です。もちろんスタッフの方も一緒に舞台を作るので手伝っては下さるのですが、連日のショーとなると打ち合わせやリハーサルが当日にあることが普通です。すると当然ムチャは言えませんし、台の出し捌けや紙吹雪の掃除など、ショーの全体構成に影響を与えたりだとか、スタッフさんにあまり迷惑をかけるようなお願いはできません。

~時間と空間~


ボードビルという舞台の大きな構成の中で、マジシャンに与えられるものは5分ほどの「時間」と6尺×12尺ほどの「空間」だけです。それをはみ出した部分は、全体構成に影響しないかどうか演出のチェックが入った上、OKがでない限り使うことはできません。ですからそれを踏まえて出演しないと、やろうと思っていたパフォーマンスができなくなり、当日の打ち合わせで八方塞がりになる可能性が大いにありえます。自分のパフォーマンスが、ボードビルという大きな枠組みの一部であることを認識しなくてはなりません。
こう言ってしまうとなかなか制約の強い世界の様にも聞こえますが、逆に言えば与えられたこの「時間」と「空間」は自由に使うことができるということです。お客さんを目の前にしながら、5分間ほどの間、舞台上の空間が自由に使わせてもらえる。ワクワクしてくるじゃありませんか!そう考えることができれば、小さな「時間」と「空間」が無限に感じられてくるはずです。
もちろんそんな限られた世界で自分のできる最高のパフォーマンスをやろうと思えば、手順や演出、音響や照明、衣装、使う道具や演目まで様々な部分に工夫を施していく必要があります。具体的にどんな工夫をしていくかは次回以降詳しく書いていきます。

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