2013年5月20日月曜日

新ネタはないんですか?


ボードビルの話、第7段。
ネタのレパートリーを増やすことについての話題です。

※以前に三畳半工房さんで連載させていただいていたボードビル体験記の再掲です。

~新ネタは無いんですか?って聞かれた。~


私自身、演出さんの「新ネタはないんですか?」という質問に対して色々悩みました。ステージマジックの新ネタなんて一朝一夕でできるものではありませんし、アイデアが出てもそれを芸として昇華させるには膨大な時間がかかります。

とは言えボードビルショーでは週1のステージが毎週連続して続くワケです。リピーターさんも多いです。同じネタが1カ月も続いてしまうと、お客さんは当然飽きます。私の場合は当時シカゴの四つ玉を4週間、急ごしらえで仕上げたゾンビボールを6週間やったので、どう考えてもそろそろ「新ネタは?」と聞かれる頃でした。

この新ネタという考え方、同じマジシャンが演技をマイナーチェンジして新ネタと言い張っていてもすぐに飽きられてしまいます。マジックではなくボードビルを見にきたお客さんから見れば、どれも同じ「マジック」なのですから、似たような演出は同じ内容に見えて当然です。

もちろん、マジシャンとしてのキャラクターがしっかりと確立して、マジックというよりも個人を見に、そのためだけにお金を払ってショーを見にきてくれる人が大半となるほどの看板エンターテイナーとなれば話は別です。が、当然それは理想の話で現実はそうはいきませんから、現実的に経験値を詰める演技を作っていきたいところです。
では、どうすれは演出にバリエーションを付け、お客さんが「新ネタだ。」と思ってくれるような演技を作ることができるのでしょうか。これは簡単にいうと、「違う演目をやる」のではなく「違う物語を伝える」という考え方を持つことです。お客さんは毎回「今日は何が起きるのかな。」とワクワクしながらショーを見にきてくれます。そこで「新ネタ」と銘打つからには、演目や現象のバリエーションでなく、演出にバリエーションを持たせることが重要になってきます。そうなるとやはり、以前書いたように、ストーリー性のある演技の方がボードビルにおいては有効になってきます。

レパートリーを増やす利点は他にもあります。それは、様々な環境の舞台に対応できるようになることです。客席との距離、照明の具合、音響設備など、舞台の環境は出るショーによって様々です。自分のレパートリーそれぞれに対して、どういった舞台なら最高の演出になり、どんな設備なら実演可能、あるいは不可能かを押さえておくことで、時と場合に応じた最高の演技を提供することができます。

演技にバリエーションを付ければレパートリーが増える。すると色々なところで演技できるようになり、また継続したボードビルショーにも対応できるようになり、たくさん舞台経験ができる。経験が増えると自分の演技に磨きがかかる。こうして自分がレベルアップしていくためにも、自分の演技にバリエーションを付けることはとても大切です。



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