2011年10月30日に行われた、京都奇術競演祭の感想です。
思ったことを率直に書いていきます。マジシャンさんにしか分からない言葉が出るかもしれませんが、ご了承ください。
開演
まず、開演時間が押したにも関わらず急に客電を消すのは危険です。
普通に10分以上押していて、ちょっと立ち歩いている人もいました。
一言、何か必要だったと思います。
オープニング
オープニングムービーが流れました。
が、国民文化祭とも京都奇術競演祭とも関係のない、コンセプトのよく分からない映像が流れました。
正直、必要なかったんじゃないかなと思いました。
司会
ちゃーりーさんとみゃこさんによる司会です。豪華!
なんとなくグダグダで、ノリで押しきってる雰囲気から
「ぜったいこれ司会の原稿、さっき貰ったってwww」
って思ってたら、原稿なんて貰ってないそうです。えっ……
手品の司会で、ある程度の原稿がないとキツかったと思います。
斯波幸子さん(神戸奇術の会代表)
いわゆる「町の手品クラブ」といった雰囲気の演技で、学生にとっては新鮮だったと思います。
いや、「町の手品クラブ」にしては上手すぎるかもですね。
和傘を中心とした、和妻の演技でした。
スピーディーな演技に慣れている若者にとってはちょっとダレるテンポかもしれません。
2階席だと色々見えちゃう場面もあったのですが、つかみとして良かったと思います。
秋保賢幸さん(東京大学奇術愛好会OB)
四つ玉の演技でした。
関東の学生マニピュレーションということで、スタイリッシュな演技でした。
ゴリゴリなスライハンドの技法が登場して、マジックしてる側の視点としては、おおっ、となりました。
ただ、やはり筋は通っていなかったです。
カラーチェンジなども、無意味にパパッと現象が行われるので、何が起きているのか分からないうちに演技が終わります。
それが関東学生マジックの文化なのかも知れませんが、面白さが分かりません。
いや、すごいんですけどね。
SEIYAさん(関西大学・高槻教室)
バラをモチーフにした演技です。
見ていて悲しくなりました。見るのが辛かったです。
バラの花をもいで、花びらをズタズタにして、最後には花瓶まで消えてしまう。
救われないお話です。なんというか、僕が何か悪いことしましたか?って感じです。勘弁して下さい。
演技力は、あったのかもしれません。だからこそストーリーが伝わり、悲しくなりました。
お客さんにどんな気持ちになってほしいのか、「表現」という自己満足に捕われずにもう一度考えてほしいです。
今度はぜひこの表現力で、お客さんが楽しい気持ちになれる表現を見せて欲しいなと思いました。
村田奈央さん(夢奇房)
「ちょっと間違えた和風」みたいな演技でした。
全体的にコンテンポラリーで、何が何だか分からない演技だったと思います。
曲と、衣装と、現象と、表現が見事に分離していました。
曲のチョイスは、もうちょっと何とかならなかったんでしょうか。
女性的で繊細な雰囲気で始まりながらも、モノの扱いはぞんざい(良く言えばワイルド)で、現象に一貫性もありません。
コンテスト手順だからでしょうか、色々と構成に苦労もあったのだと思いますが、エンターテイメントとしては酷かったと思います。
夢奇房さんからの参戦ということで期待していたのですが残念です。
もっと表現力を磨いて、今度はぜひコンテスト用ではなく、お客さんがどう感じるかをしっかり考えた「エンターテイメント」としての演技を拝見したいです。
さて、このお二方(SEIYAさん、村田さん)についてなのですが、一緒に行った後輩が「面白いとか面白くないとかじゃなくて、この2人は不快だった。」って言ってました。
僕も、この辺りで気分が悪くなりました。
これはおそらく、出順構成の問題が大いにあると思います。
コンテンポラリーなゆっくりめの、8分近い演技を2つ続けて見せられたら、そりゃあ多少気分も悪くなります。
また、キャラクターの感情を表現したり、演技に設定やストーリーをつけるなら、もっとちゃんとやってほしいです。
花1つ扱うのにも、キャラクターには色々思いがあると思います。その辺りの考証が甘すぎます。
これは表現力とかじゃなく、手順を組む段階からの問題です。
1人のキャラクターが、1つの思いを持って、1つの動きをする。そこに現れるごく自然な、当たり前の動作がないので、違和感をおぼえます。
花が散ったら、悲しいでしょう。残った茎だけを見て、キャラクターはどう思うでしょうか。無造作にテーブルにおいてそのまま放置、なんてしませんよね。
それは1つの例ですが、そんな当たり前のことを当たり前にできないのであれば、設定はつけずに「芸」として、手品の不思議な部分だけを見せて示している方が筋が通っています。
じゃないと、悲しい気持ちになるお客さんが生まれてしまうんです。
森岡哲也さん(慶応義塾奇術愛好会)
シンブルです。
関東のマニピュレーションということで、感じたことは概ね秋保さんの四つ玉と変わりません。
ただ、曲がもう……聴覚テロです。
同じフレーズのくり返し→ちょっと変わった→またさっきのフレーズのくり返し
みたいな曲で「あれ?僕さっきこれ見た?」という、トランスみたいな感じになりました。
頭がおかしくなるかと思いましたが、演技は普通の学生マニピュレーションでした。
個人的には関西にはない、マシュマロみたいな大きいシンブルが生で見れたのでちょっと満足です。
橋本昌也さん(同志社大学マジック&ジャグリングサークルHocus-Pocus)
以前僕の舞台にも出てくれた方です。ゾンビボールと扇のアラカルトでした。
どうしてもゾンビと扇が分離した演技になってしまっていたのですが、コンテスト用として仕方ないんだろうと思います。
演技時間も長くなるので、エンターテイメントとしてやるにはゾンビに止めた方が良いかも知れませんね。
石田天海氏もフロタマサトシ氏も、演技時間は3分がベストだとおっしゃってますし。
個人的に評価できる点なのですが、今回は京都特別賞の枠が有り、和装で出ていた方も多い中、彼も和装のコンテスタントでした。
彼以外のコンテスタントの演技は、正直言って「和風なら京都っぽい」といった感じで、もし京都賞を狙ってるとしたら京都をなめたようなアクトばかりでした。いや、京都人としてそう思っちゃうんですよ!
その点で彼は「和装」「稲荷の面」「鞠」そして終わり方が「弧狗狸の憑き物」のような雰囲気を表現しており、京都らしさを出していました。
実際彼は京都特別賞を受賞したのですが、とって然るべきだと感じました。
休憩
第2部が始まるときも場内にアナウンスがなく、急に客電が消えました。
照明テロです。事故がおきますよ。
入江賢也さん(早稲田マジッククラブOB)
扇の演技でした。
うーん、現役の頃はもっと上手くできていたのでしょうか。
ここまでの演者さんが技術的に全く失敗していなかった分、技術にアラが目立ちました。
それはまあ良いのですが、曲と打点が全然合っていませんでした。
OBと言うことで色々忙しい中大変だったと思います。現役時代に一度、演技を拝見しておきたかったです。
片山幸宏さん(鳥取大学奇術部)
ミリオンカード、非常に軽快で、楽しい演技でした。
郵便物を持っている演出なのに、その郵便物らしき物を床に落としていたのはちょっと残念でした。
ミリオンカードに設定を付けようとすると、床に落ちる物をどう意味づけるかは難しい所ですよね。
川窪真一さん(東洋大学マジシャンズソサイエティOB)
ボードとモチーフを使ったサイレントのチョークトークでした。
記号のモチーフという意味では、もっと遊べただろうなと感じます。早送りとか巻き戻しとか。
例えば再生→停止→再生で違う曲が流れること、こういう部分に「ん?」と違和感を持って、もっと筋の通った演技にして欲しいです。
ボードということで持ち運びにも便利で、チョークトークのトリガー部分がないので、小劇場でも通用する演技です。むしろ、小劇場舞台でこそ映える演技でしょう。
照明の使い方がもったいなかったです。やたらめったら焚くんじゃなく、もっとスタイリッシュに必要十分な照明で効果的な演出を狙いましょう。それも、小劇場でこそできると思います。
コンテスト向きじゃなかったのかもしれませんし、大舞台向きでもなかったのかもしれません。
受賞には至りませんでしたが、今回最も面白かった演技です。
もう一度見たいです。むしろ、僕の舞台に出てほしいです。そう感じられた演技でした。
高橋慎吾さん(関東ステージマジックサークル)
シャボン玉を使ったアクトでした。
社会人ということで、お菓子の研究とかいろいろ忙しい中大変だったと思います。
いわゆる「町の手品クラブ」風の演技ではなく、かなり完成度の高いスタイリッシュな若者風の演技でした。
ひとつ気になったのは、水モノの扱いです。
シャボン玉を床にぶちまけてますが、床に何も敷いてませんでした……が…大丈夫なんでしょうか?
センターマイクがあったらアウトですし、そうでなくても直接舞台を汚しているのであまり好ましいことでは無いです。
ホール側と舞台監督さんの許可の元やってるなら良いのですが……ちょっと心配でした。
リアップを使っているとのことですが、髪は薄くないと思いました。
乾龍之介さん・若林智美さん(京都大学奇術研究会)
ハトの演技でした。1羽目のハトが飛んで行っちゃいましたが大丈夫でしたか?
打点が要所要所でズレており、動きが曲に合っていないのが残念でした
ダンスの素養はあるのでしょうか?無いのなら、こういったスタイルの演技をするのであれば少しでも習うなりしてから演技に望みましょう。思いつきでやっても上手く行きません。
現象が、1羽目のハトが出る段階でクライマックスに達しており、それ以降の演技は印象に残りません。
せっかく最後に花が咲いたりクラッカーがなったりしても、蛇足になってしまいます。
ハトの演技はハトそのもののインパクトが強いので、その辺りの表現が難しいですね。
休憩
もう客電急に消すのやめてください。ビクビクしながら消えるの待ってました。
誰も怪我してないなら、もはや奇跡です。
南陽高校マジック
ゲスト1、高校生によるマジックショー。イリュージョンでした。
後半2つは、ストーリー付きのイリュージョン。高校生でこれだけできたら大したものです。
とても楽しめました。
酒田慎吾さん
ジャグリングです。さすがの貫禄、楽しめました。
マジックの中にジャグリングが1つで、お客さん混乱しないかな、と心配していたのですが、司会が上手いことやってくださったので良かったです。
藤山晃太郎さん
古典和妻!めっちゃ面白かったです。
回ってました。本当に回ってました。
僕の同期とか後輩で「和妻やりたい。」って言ってる人は、とりあえず一回見てみると良い。
エンディング
授賞式がありました。
結果を列挙しますと、以下です。
1位:村田奈央さん
2位:片山幸宏さん
3位:高橋慎吾さん
京都賞:斯波幸子さん、橋本昌也さん
コンテストの審査基準については、正直よく分かりません。
僕も手品の大会で紙芝居して3位頂いたことありますが、何がどうなって点数になるのやら。
1つ言えることは、面白い演技が賞に繋がるとは限りませんし、賞を取ったから面白い演技だとも限らない、ということです。
コンテストでの高得点はエンターテイメントとしてのクオリティには直結しません。
今回も、エンターテイメントとして受賞者より面白かった演者はきっと居ると思います。
やっぱりコンテストってよくわからんですなぁ。3時間、疲れました。
総じて、今回の競演祭は告知から本番に至るまで「マジックショー」と「コンテスト」の2通りの表現が入り乱れてましたが、これは明らかに「コンテスト」でしたね。
マジックショーとしては、この構成ではダメだと思います。出順も、演出も、もっとちゃんとしないといけません。約8分×11人も、司会だけで繋ぐには長いです。
コンテストならコンテストとだけいって、マジックショーと表現すべきではないです。マジシャンが言うのもなんですが、ウソついちゃいけません。
ゲストショーが面白かったのも、もちろん演者の実力があったからも有るのですが、コンセプトがはっきりしていたから、というのが大いにあると思います。
「高校生がイリュージョンします。」「ジャグリングします。」「古典和妻します。」
そういう意味で、今回の舞台は「誰のための(誰でも楽しめる?)」「どんな(京都の?)」「マジックショー(コンテスト?)」がはっきりしていなかったのは、ショーとしては致命的ですね。
今日初めてステージマジックを見たお客さんに、これがマジックショーだとは思ってほしくないです。
最後になりましたが、関わった皆さんは本当にお疲れさまでした。
何かを持っている、ポテンシャルの高いコンテスタントさんが多く出演されていたと思うので、今度はぜひ、エンターテイメントとしてのマジックショーでお目にかかりたいです。
PS:エンディングムービーが流れてましたが、あれはいらないと思います。
PS2:アンケートの日本語がカオスでした。切羽詰まってたのかな……
PS3:あれだけでかいアンケート渡しておいて、書いてるお客さん追い出すってどうなの。
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