2024年12月7日土曜日

レビュー『APPARATUS Vol.3』

 マジケ2024冬【ルーンの帽子】『APPARATUS Vol.3』のレビューです。

ルーンさんによるアパラタスシリーズ第3弾です。
今回も5つの作品が解説されています。
作品をひとつずつレビューしていきます。

・赤と黒の相性占い
ゴリゴリの数理原理を使った相性占いです。
私は正直この原理は、面白くする方法が存在しないんじゃないかとまで思っていたのですが、楽しい演出に乗せて最大限面白くなるように工夫されています。
この原理で、ワクワクの度合いを徐々に高めていく流れにしているのはすごいと思います。
補足で触れられているもう1つの原理については何とかなる印象があるのですが、この原理も何とかなるなんて、さすがでした。

・まねき猫
2枚タイプのタンタライザーのアレンジです。
原案の退屈な作業をなんとか軽減しようというアプローチですが、その手法が賢いです。
えっ、そこをいじって成立するの?と思ったら、途中でちょっとしたサッカー風のパターを入れることで成立させています。なるほどなあ。
コミカルな演出部分の良さを差っ引いても、構造が良さが際立つアレンジだと思います。

・プレゼント交換
カードの位置に関する手順です。
これは、うーん、手続きが大仰な割に現象が地味です。
ただ、演出に凝らずシンプルに演じるともっともっと地味でよく分からない手順になってしまうところを、設定を駆使してなんとか楽しげなお話になるよう工夫されています。
やれることはやって、あとは演者のポテンシャル次第といった感じでしょうか。
何とかなる人が演じれば、何とかなるかもしれません。

・Dirty Jacks
2枚のジャックがカードを当てます。
原案を少し変えただけなのですが、キャラクターをしっかり立たせたことで、あくまでも第三者であるジャックがカードを当てている感じになり、当て合いっぽい原案とはかなり違った雰囲気で演じられると思います。
Double Thought 系のプロットって、どこか気持ち悪さがあってそれを楽しむものだと私は感じているのですが、気軽に演じられるようにした良いアレンジだと思いました。
必ずしもジャックでなくて良いので、何かお話が作りやすいキャラクターを考えてみるのも楽しいかもしれません。

・Number Comes Up
ACAAN風のカードマジックです。
なんとこれには原理の原案がありません。つまりルーンさんのオリジナル原理!
応用元の手法は書かれているのですが、手続きは似ているものの数理構造としては全然違っています。
で、何かこれに似た構造の数理原理を見た気がするなあ、何だったかなあと悩んだのですが、わかりました。
これはSimon Aronson のある数理原理と似た構造で、手続きが異なる独自の数理原理ですね。
Aronson のものと比べて良い意味で簡略化されており、特にジョーカーなどの特別なカードをほぼ不要にしているのが便利です。
そんな独自の原理の使い方のひとつといった感じの手順です。
即興的に演じられるので使い勝手も良く、1人目の観客の作業を決め打ちした値にしてしまえば(例えば日付、時間、お客さんの年齢など)、原理を様々な手順に応用できそうです。
この原理を知るだけでも価値があります。すごい作品でした。

総合して、これまでのアパラタスシリーズの中で群を抜いて良い作品集だったと思います。
このシリーズに興味が湧いたら、まずこのVol.3から読んでみるのも良いかもしれません。

マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。
バックナンバーも再販されています。(ブースのページはこちら)

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