2024年12月5日木曜日

レビュー「ホームズ&ワトソン」

 


マジケ2024冬【TANISHImagic】「ホームズ&ワトソン」のレビューです。

おなじみ谷英樹さん(厚川昌男賞ウィナー)による新作です。
探偵のストーリーで進行する、いわゆるタンタライザーのプロットに、インパクトのあるクライマックスが付いています。
とても良くできた作品で面白いのですが、クレジットがほとんどないです。

まず大枠のタンタライザーのクレジット(これが非常にややこしいのですが……)が一切なく、また本作と関係が強いDenis Behr のアイデアにも触れられていません。
一応、クレジットで紹介されているテキストではこれらに触れられているのですが、このテキストがまた厄介で、ほぼプライベートトークというか、どこで発表されたものなのかがはっきりしません。
じゃあどうやってアクセスするのかと思ったら、付録としてダウンロードできるようになっています。それはもはやリファレンスとは言えないのでは。
詳しく調べるのが大変なプロットではあるのですが、せめて押さえるべき既存の作品だけでもピックアップしておいて欲しかったです。

そして凄いと言うかややこしいことに、この作品の一部のアイデアに新奇性がある気がするんですよね。
実は2年ほど前に私がちょっとした手順を出したことがあって(だから私が先だと主張したいわけではない)、そこで調べた際に前例が見つからなかったアイデアが、この作品で使われています。
100年ほどの歴史を持つタンタライザーのプロットで、構造上の新奇性が含まれていそうなのに、どこまでが既存のアイデアでどこからが新奇なのかというのが分からず、この作品の立ち位置がはっきりしないのは非常にもったいないと感じました。

作品としてはとても面白いですし、安いので、どんなアイデアが用いられているのか興味があれば買ってみると良いかと思います。
マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。

ひょっとしたら資料的にも大事な作品になるかもしれませんが、残念ながら本作の記述ではそこまで追求できませんでした。

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