2013年12月23日に行われた、京都大学の第3回学外公演
「REAL
TO DREAM」の感想です。
第1部
1:69723
ハトを主体にして、カードやシガレット、扇なんかも交えた演技でした。
「ロックな兄さん」と読むそうです。実際、かなりロックな兄さんでした。
ハトの出現はとても鮮やかで、楽しい雰囲気でした。
扇やシガレット、カードなども交えて演じていましたが、そちらの方は特に脈絡もなく、テンポもあまりよくなかったのでハトに比べて見劣りしていた印象です。
特にシガレットに関しては、ずっと咥えタバコでの演技だったのでちょっと印象の悪いキャラクターに見えてしまいました。
シガレット自体がと言うわけではないのですが、シガレットの扱い方などを含めたキャラクターがハトとミスマッチでしたね。
電子タバコなのでしょうか。全く灰が落ちていなかったことに違和感がありました。
そして電子タバコだとしても、ハトに煙を吹きかけるのはいただけないです。ハトがかわいそうだと感じました。
大舞台にはまだ慣れていない感じでしたね。舞台を大きく使おうとしていることは分かったのですが、舞台全体は使えておらず、時おり移動しては舞台の狭い範囲で演技している印象でした。
勢いが有って素敵な演技だとは思うのですが、昨年の方が演技に一貫性があって良かったなと感じました。
2:Fairy
Tale
大きなバラのモチーフを使ったゾンビボールです。
一昨年もゾンビボールで出演している演者で、技術的には非常に良かったと思います。
しかし、演技構成や表現に関してはまるっきり力不足で、何がしたいのか分かりませんでした。
最後に台の上にのぼったのも意味不明ですし、ゾンビの消失に当たる部分も構成がおかしいです。
バラのモチーフを掴んで、それがバラバラと散っていくのって、手品じゃないですよね。バラって思いっきり握ったら散ると思いますし。
構成や演出の面と、演者の演技力の面で、もっと練る必要がある演技だなと感じました。
3:棒
ウォンド&シンブルの演技でした。NFでも拝見しました。
シンブルが強烈に上手く、スピード感もあって素晴らしかったです。
ウォンド&シンブル部分はやはり何がしたいのかよく分からない感じがあるのですが、これは演目特有の課題なので仕方ないとして、今まで見てきたウォンド&シンブルの中では非常に見やすく演じられていました。
ウォンドの部分は少し単調で、特にスピード感のある箇所では、出現したのか漏れたのか分からないような現象がちょくちょく有り、見づらく感じることもありました。
しかし全体的に、綺麗にまとまっており、楽しかったです。
4:Yes
or No…?
メリケンハット風のアラカルトで、二十世紀シルクをしたり、あとバラとか出てきました。
ウォンドに続けての出順で、ウォンドと同じモーションでのバラの扱いがあったのは残念です。
具体物と抽象物が入り乱れていて、何がしたいのか全く分からない演技でした。
帽子が分裂して、片方の帽子のリボンをはずして、そのリボンが何かに変わるのかと思いきや単に長くなって、リボンを外した方の帽子をかぶるという、なんとも意味の分からないラストでした。
不思議かと言うとそうでもなく、派手な物がいっぱい出たのかと言うとそうでもなかったです。
もっと演者のストレスになる部分を削って、シンプルに派手だったり不思議だったりする現象部分を精査すれば、フットワークの軽い演技になるのかもしれないなとボンヤリ思いました。
面白さは感じなかったです。
5:おかね
主としてジャンボコインの演技でした。
両替機にジャンボコインを入れるとお札が出てくるという、なかなか意味不明なプロットです。
金額も合ってないし、両替しただけなのになぜか演者が喜ぶし、そもそもジャンボコインはお金じゃないし……
設定とかストーリーをつけたいなら、もっと細部にこだわって欲しいですね。茶番にしか見えません。
なぜか最後にお札をばら撒いて終わります。
本当に何がしたいのか分かりませんでした。
幕間:月曜劇場~全沢直樹~
キャラクターを付けたストーリー仕立ての、カーディオグラフィックでした。
しかし、ストーリーもハチャメチャで、設定に一貫性がなく、喋りも雑で、だらだらと長い、最悪な演技でした。
銀行で働くしがないサラリーマンの主人公が、上司からの命令で、このマジックショーで手品をすることになり、もし失敗したらジャングル支部へと出向になってしまう、というストーリーだそうです。
「しがないサラリーマン」と言った割に、途中で「長年営業をやっていて」とベテラン風の事を言い出したり。
一組のトランプと言っているのに明らかに枚数が少なかったり。
かと思えば次のシーンでトランプのことを「デック」と言ったり。
何か動作をするたびに「よいしょ」と言ったり。
お客さんの名前をちゃんと言えていないのに、早口でどんどん呼び方が雑になり、それでも適当に呼び続けたり。流石にお客さんに失礼です。
演技力にも難が有りすぎて、一度失敗する台本なのが失敗する前から分かっています。サッカートリックになっていません。
最後はなぜか主人公が特殊な力を持っていて、それを使ってカーディオグラフィックを成功させることが出来ます。なら最初からその能力を使えよと。
曲の鳴るタイミングが現象とずれていて、曲が鳴り終わってから現象が起きていたのでインパクトも非常に薄いです。
あまりにもだらだらしすぎていて、客席はざわつくし、子どもは飽きて遊び出すし、もう散々な空気になっていました。
そもそも僕は半沢直樹みてないんで、何のネタかすら分かりません。一部の人にしかウケないネタはちょっとやめた方が良いですね。
ストーリーを作る力も、語る力も全く無いようです。
これなら普通にカーディオグラフィックを演じたほうが、何百倍も面白いと思います。
客席の空気は壊れ、お客さんの集中は切れ、この後の演者さんはさぞかしやりにくかったと思います。
良かったところは、無いです。
どんなに贔屓目に見ても、お金を取って舞台に立つレベルではありません。
6:桜月
和傘などを使った、和風の演技です。
技術的にも雑で、動き方も道具に振り回されているような感じで見苦しかったです。
傘を思いっきり落とす(と言うより、下に投げつける)アクシデントがあった後に、刀をおぼつかない動きで振り回していて、危ない、怖いと思いました。
途中で狐の面をつけるシーンが有ったのですが、それによって演技の質が変わるということも無く、意味が分かりませんでした。
曲が、冒頭の鈴の音から事故状態で、曲の繋ぎ方も雑でした。
曲の繋ぎ方が雑なのは今回の演者全般ある程度言える事なのですが、特に酷かったです。
和の演技をするにしてはあまりにも見苦しいので、歩き方から直した方が良いのではないかと思いました。
第2部
1:ROMANCE
FOR STRINGS
グラスの演技です。アンタイでも拝見しまして、特に変化はないので省略します。
今回は照明ミスが有ったように思いました。
2:SOMeone
is cAlling
ストーリーっぽい流れの中で行う、携帯電話の出現をメインにした演技でした。
まず最初に携帯ゲームをしているシーンから始まり、遅刻しそうになって急いで着替えるというシチュエーションでの衣装チェンジから始まります。
掛け時計から「ピリリリリリ」というアラームが鳴ったのは、少し構成のミスだと感じました。あと、そんなギリギリの時間にアラームセットするなよ……とも。
その後なんとなく家の外に行ったような表現があり、上司のような人が登場し……とストーリーが続く中で、携帯電話がなります。
携帯電話の部分は、SOMAのモロパクリで、流石にそれはやって良いのか??と感じました。
最後は大きな布の裏で、演者が女性とすり替わります。
この現象、紙袋等の位置関係や、照明などでの舞台の切り方を見ると、場所としては家の中のはずなのですが、女性はいつの間にか家の外の表現になっています。
すると客席の後ろから、サンタ服を来た演者が登場し、舞台上で女性にプレゼントを渡して終わります。
ただ、さっきまでスーツだった演者がサンタ服に変わっているので、本当に同一人物だったのかがまず怪しく、まったく不思議には感じられませんでした。
ストーリー仕立てなのに筋は通ってなく、舞台上のシチュエーション設定も雑で、非常に残念な演技でした。
でもまあ、全体的にコミカルなキャラクターで、最後は客席からサンタが登場するワケですから、子どもにとっては賑やかで楽しいアクトだったのかなとなんとなく考えていました。
しかし実際の反応はと言うと、近くの席の子供から
「はあ?」
「なに?」
「意味分からん。」
の声がバンバン上がっていました。
ストーリー仕立ての演技だと、子どもはやっぱりそのストーリーに移入していきます。
ちゃんと筋が通っていないと子どもにとっては意味不明なものになってしまうので、単純に派手な現象を起こせば良いってわけじゃないんだなぁと再認識しました。
演技のタイトルの大文字アルファベットを並べると「SOMA」になるんですね。
パクリましたって公言してるようなものです。これは流石に演者のモラルを疑います。
たとえちょっとパクったとしても、言っちゃだめでしょ、それは。
3:Succession
ジュエリーのプロダクション演技です。
ネックレスの出現の向きがちょっと幕と平行になっていなかったのだけ気になりますが、それはまあ些細なことです。
全体的にしっとりと、それでいてコンパクトにまとまった良い演技でした。
淡々と続く演技なので後半はダレてしまいますが、それを踏まえてあのボリュームで良かったと思います。
最初にシャンデリアを1つ出してしまうので、演技の盛り上がりがそこに来てしまった感じがします。
最後に花の復活をしていましたが、非常に地味な終わり方になってしまい残念でした。
しかし、ジュエリーではシャンデリアよりも強い現象は今のところ無いと思うので、終わり方をどうするかは非常に難しいと思います。
演目が持つ固有の問題点は別とすると、総じて、とても素敵な演技でした。
幕間:げーむ☆たいむ
4つの紙袋の中に1つだけ釘の入ったものがあり、お客さんと演者が順番に紙袋を潰していく、いわゆるペインゲームでした。
テンポも良く、すこしお客さんをもてあそぶ様な話し方を含めて、非常に幕間らしくて良かったです。
話し方も上手で、ダレない感じで最後まで楽しく見ることができました。
子どもは少し怖がっていましたが、舞台まで距離があるので許容範囲かなとも思います。
NFでも拝見したのですが、その時はもっとキャラクターを推していく設定付きの演技でした。
僕の個人的な感想としては、NFの時の演技がすごく良かったので、そうじゃなくなっていたのは少し残念です。
キャラクターをつけても途中で集中が切れず、最後までやりきることができる演者さんだったので、ぜひまたNFの時のアクトを見たいです。
4:Enjoy
MUSIC♪
音符とCDを使った演技でした。
CDと曲をリンクさせて、CDが変化したら曲も変わるなどの演出をつけていましたが、あまりにもツメが甘いです。
CDと曲のリンクは途中で諦め、関係ないマニピュレーションをただ行うのはとても残念でした。
トランペットにマウスピースははまってないし、ト音記号はずれてます。
設定を付けるなら、もう少しこだわらないと。ただの茶番でした。
小学生の学芸会の方が、まだちゃんとしています。
5:Celebrate
パラソルのプロダクションでした。アンタイでも見たので省略します。
お客さんの手拍子と演技の打点が合ってないのは、少し残念ですね。
6:よ・し・だ・ま
ボール&カードのマニピュレーションでした。
ボールが描かれているカードからボールが出現したり、またボールがカードの絵になったりという場面が特徴的で、面白かったです。
NFでも拝見したのですが、NFの会場ではボールの書かれたカードが上手く機能していませんでした。
この大きな舞台ではどうなるかなと思っていたのですが、完璧に機能していて感激しました。
今回の演者の中で最も大舞台に順応し、大舞台の演技が出来ていたと思います。
「大きく動く」とは違うところで「大舞台での演技」を実現したのは凄いことだと感じました。
最後にトラブルで、続行不可能での自落ちになってしまったのは悔やまれますが、それでも力のある演者である事は伝わりました。
曲と打点がまるっきり合ってないことと、曲のつなぎ方が非常に雑なのはとても気になりましたね。
今後、このあたりのセンスを磨いていくと、より力を付けることができると思います。
トラブルのこともあり、決して手放しで褒めることは出来ないのですが、良かったと思います。
7:gentleman/phantom
フラッグの演技です。
せっかく出現した旗を畳んで帽子に入れたりと、手品としては台無しになる場面がちらほら見られました。
不思議だという印象はなかったのですが、たくさん旗が出て派手ではありました。
国旗はそれぞれの国を象徴するシンボルである、ということを尊重していない点は非常に残念でした。
国旗をすべて平等に扱うべきとか、そこまで難しいことは思っていません。
例えば、ブレンドシルクで出てきたイタリアだけ、唯一飾られず、あからさまに捨てられる国旗でしたね。
誰かを傷つけてしまう可能性が大いに考えられる行為ですから、こういったところはもっと気をつけるべきでしょう。
最後は巨大なグルジアの国旗でしたね。そこにも何か意味を見出してしまいそうです。
国旗には意味があるということを、しっかり考えてみて欲しいです。
途中で仮面をつけたのは、意味がよく分かりませんでした。
タイトルの通り、紳士からファントムへのキャラクターチェンジのつもりだったのでしょうか。
演者自身が演じ分けできていないので、仮面や曲に演者が負けていて情けなく感じました。
キャラクターを演じるにはあまりにも演技力が足りていないです。学生/学生って感じでしたね。
また、なぜかファントムの後に仮面はそのままで曲が戻り、いよいよ何のキャラクターを表現しているのか迷走していました。
トリ演者だったのですが、モヤモヤする幕引きとなりました。
司会
声のトーンが北大路バスターミナルのアナウンスに似てました。
要するに、非常に暗いです。
喋り方もなんとなくもたついていて、舌足らずで、手品で盛り上がった空気をたびたび盛り下げていました。
なぜこの方が司会に抜擢されたのでしょう?
向いてない方に司会をさせても、本人もお客さんも辛い思いをするだけだと思うのですが……
その他
ブリッジに、前の演者の曲を流すのはやめた方が良いと思います。
1曲、ブリッジ用の曲を用意すれば良いんです。
前の演者の曲を流すと、変に前の演者の空気を引っ張ってしまいますし、せっかく曲にピッタリ合わせて終わった演者がかわいそうです。
また、今回のようにトラブルでの自落ちがあったとき、音響の事故につながります。実際、ボール&カードの後のブリッジは音響トラブルみたいになっていました。
全体
本編を通しての設定などは特になく、発表会形式として色々なマジックが見られたので、そんなに悪いショーではなかったと思います。
しかし、第1部幕間が、すべての空気を壊していきました。
第1部幕間の途中から、客席からはため息が聞こえ、もはやうつむいて手品を見ていないお客さんも多数。
休憩の間、ロビーでため息をついて呆然としている人がたくさん見られました。
改めて思い返してみると、全体的には普通の学生マジックショーだったと思います。
しかし、ショーを見た帰り道では憔悴し、頑張って最後まで見たなぁという印象を持っていました。
たった1つの演技が、ショー全体の雰囲気をここまで壊してしまうことが有り得るということに、驚きました。
第1部の幕間、本当に必要でしたか?
0 件のコメント:
コメントを投稿