2013年7月5日金曜日

盲学校マジックの前例



このブログは、盲学校でマジックショーを!としていますが、過去に盲学校でマジックを演じたことが有る方っていらっしゃるのでしょうか?





やったこと有るといっても、特に、ただ勢いでやってしまっただけではなく、視覚障害のことをしっかり考え、その場にいる児童生徒ひとりひとりと真剣に向き合った演者となると、かなり少ないと思います。そして、その中でも自身のホームページなどで盲学校マジックのことを発信してきた方となると……僕は、そういう前例はただ1人しか知りません。




すでにその方は…



とは言っても、直接存じ上げる方ではありません。そして、その方は既に他界されています。先日の記事のとき聴覚障害者マジシャンNOBUさんと出会った後、京都に戻った僕は、盲学校マジックについてちょっと真剣に考えました。あまりにもつかみどころの無い話で、前例が存在しないかを調べようと、とりあえずインターネットで検索をかけました。

すると、ひとつのブログがヒットしたのです。ブログを見つけたその日は徹夜して、ログを最初から最後まで全て読みきったのをよく覚えています。そのブログは、ある故人のマジシャンのお弟子さんが、亡きお師匠さんとの思い出を語っているブログでした。北海道の、無名の方だったと記憶しています。




「ひまわり」さんの貴重な記録



お弟子さんはご自身を「ひまわり」さんと名乗っていたように記憶しています。もうそのブログを見つけることはできません。ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてほしいです。僕の記憶だけを頼りに、この記事を書いています。そんなお師匠さんとのエピソードの中に、盲学校でマジックをした話が有りました。

お師匠さんはマジックの出演依頼を受け、その打ち合わせに向かった後、ひまわりさんの元に青ざめて戻ってきたそうです。どうしたのか尋ねると、お師匠さんは「聾学校での依頼を受けたつもりが、実は勘違いしてて、打ち合わせに行ってみたら盲学校だった。」「今更できないとも言えないので、大丈夫ですと快諾してきた。どうしよう……」ということでした。




まちがって受けた依頼。しかし……



そこからこのお師匠さんの凄かったところは、依頼を受けた盲学校に足繁く通い、子どもと触れ合い、その実態を調査し、そして悩み悩んで、「この子どもたちに喜んでもらえるマジックとは一体何だろうか。」と考えたことです。

視覚障害者はビジュアルなマジックは近くすることができない。かと言って、子ども相手に当て物のメンタルマジックばかりをするワケにも行かない。マジックショーとして、視覚障害者にとっても楽しくて、不思議に感じられるようなショー構成を作るのって、本当に大変なことなんです。そんなこんなで、このお師匠さんは、考え抜いた1つの結論といえるマジックショーを行いました。この前例が、今の僕の信念というか、盲学校マジックにおける哲学の基盤となっています。

そしてそのブログでは、盲学校マジックの本番を迎える記事へと移ります。




いざ、本番。





まず、記事を読んで、最も記憶に残っているのはチャイナリングの演技です。
「音当てクイズ」という演出で始め、色々なものを叩く音を順番に子リングどもたちに当ててもらう場面から演技がスタートします。途中でお尻を叩く音なんてのも入り、笑いが起きたりもしていました。そして、金属を叩きつける音から、金属の輪っかを使っていることを示します。




ふつうにチャイナリングを演じる!?



そこからは、まさかの展開なのですが、普通にチャイナリングを演じられたのです。金属がつながる瞬間、子どもたちから歓声が起こったそうです。「すごい!」「なんで!?」「つながった!」その方は何を思って、普段晴眼者にやるようなアプローチでチャイナリングを演じたのでしょうか。

とりあえず試しにやってみたとか、どう伝えれば良いかが分からなかったからそのままやったとか、おそらくそういうことではないのだと思います。きっとそれまでに盲学校に通って、子どもの実態を見て、コミュニケーションをとってきたからこそできた決断だと思います。

すごく、思い切った決断だと思います。当時この記事を読んだとき、なぜリングが繋がったということが子どもたちに伝わったのか不思議でした。




秀逸!ロープの演技。



次に僕が、なるほど、と思った演目は、ロープです。ディゾルブノットを子どもに握らせて、手の中で溶けるように結び目が消えるさまを体験させるというものです。

これこそ、僕の思うハプティカルな現象だと思います。「え、え、なんで、消えた!」と、現象はしっかり伝わり、好評だったようです。


あとはメンタルマジックを中心に行い、ショーは好評に終わった、という記事だったかと思います。
何度も言うようですが、このショーを行った当の本人は既に他界されています。この記事を書いたアシスタントさんに関しても、もうそのブログを見つけることができず、詳細は不明です。本当に、すごいショーだと思いますし、盲学校マジックを志す僕にとって、偉大な先人です。

できることなら一度お会いして色々とお話をしたかったのですが、それもかなわない状況です。せめて記事を書いたアシスタントさんとお話しできないかな、と今でも思い描いています。

もしも何かご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。僕のこの活動の中で、何か縁のめぐり合わせのようなものが働いて、いつかお会いできることを楽しみにしています。


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