2013年10月20日に行われたマジックソルトの発表会のレビューです。
思ったとおり書かせていただきます。
客入れ
音楽が、去年の演者の演技曲ってのは狙ってやっていたのでしょうか。
雰囲気が合っていたので問題はないと思うのですが、やはり前回公演を見ていると演技曲のイメージが強く、客入れという感じがしません。
まあリピーター向け、分かる人だけクスッとするネタとして狙って用意したのであれば、ウケたのかスベったのかなんとも言えないですが……
オープニング
オープニングムービーが流れました。
メンバーの写真が次々と流れる感じの映像だったのですが、内輪感がすさまじかったですね。
僕は知ってる人が数人いたのですが、知らない人の写真をたくさん見ているお客さんはどんな気持ちだったのでしょうか。
最後に流れる司会の人の写真のインパクトが強くて、この人が主役かな?と感じました。
まあ実際、司会の人が主役と言っても間違いではない発表会でした。
目潰し照明が炊かれて司会が登場します。
ちなみに、この目潰し照明はこのとき以外は使われませんでした。
1:カード(片山幸宏さん)
しっとりとした雰囲気の中で行われる、ミリオンカードの演技でした。
非常に不思議で安定感のあるアクトでした。
途中でカラーカードの演技やちょっと変化球の現象も挟まって、ボリュームのある演技だと感じました。
技術的に難しいことも多分に取り入れていましたが、問題もなく、最後まで楽しんで見ることができました。
2:Zwei Revolver(池田一貴さん)
シンブルの演技でした。
非常に速いテンポのアクトで、カラーチェンジなんかは何をやっているのかよくわかりませんでした。
そして後半、シンブル飛ばしを行っていました。
指先のシンブルを舞台袖なんかにピョン!ピョン!と飛ばします。
客席にも飛ばしていましたが、あれはお客さんにとっては恐怖でしかないと思います。
マジシャンにとってはシンブルはプラスチックか、まあそれより柔らかい材質だと知っているので、別に飛んできてもそんなに怖くはないです。
でも、お客さんにとっては、もしかしたら金属製かもしれないわけで。
得体の知れない小道具が自分に向かって飛んでくるって、結構怖いです。
全体的に現象を詰め込みすぎた印象があり、シンブルを客席に飛ばすことも含めて、お客さんが「シンブル」というものを知っている前提で構成されていた気がします。
「シンブル」は多くのお客さんにとっては謎の物体であることを念頭において、ひとつひとつの現象を丁寧に見せるよう心がけると多少マシになると思います。
3:C-(宮脇健介さん)
ボールとカードの演技でした。
この段階でカードの演者が2人続いたので、なんかおかしいなとは思っていました……
カラーカードも使っており、なんだか見た演技だなぁという印象になってしまいました。
この演技の段階で、前の演者のシンブルが1つ落ちていたので、踏まないか心配していました。
案の定、シンブルを踏みそうになったとき、四つ玉の演技として落としてはならないあれがドロップしてしまいました。
やはり長く演技をしているとそういうミスはどうしてもあるもので……それ自体はなかなか責められるものではないと思います。
しかし、それをずっと舞台上に放置しておくのはいかがなものでしょうか。
最優先で処理すべきものはそれじゃないでしょうか。
完全に種明かしになっていました。
ドロップしたタネの処理よりも、演技の方を優先したいというのであれば、それも考え方のひとつでしょう。
しかし、そのドロップを境に明らかに演者のテンションが下がっていました。
示し方もしまりがなく、どうにも投げやりな空気になりました。
ドロップしたタネを処理するか、演技の空気を維持するか、どちらか1つは徹底しないと。
タネはばれるわ演技の空気は投げやりになるわで、とても残念なアクトの印象を受けました。
4:どんっ!どんっ!ばんびーな!(黒川智紀さん)
軽快な動きと共に演じられるウォンドの演技でした。
以前にも見たことがあるアクトの再構成で、非常にシンプルで盛り上がる演技へとパワーアップしていました。
非常に良くなったなぁ、上手くなったなぁという感想です。
以前はただひたすら賑やかに、慌しく動いていたのですが、今回は少し落ち着いた印象を受けました。
また、以前のアクトで挟まれていた中盤の謎のシガレットはカットされ、終始賑やかで楽しめました。
しかしながら、落ち着いてしまって勢いは落ちてしまったなぁというのが率直な感想です。
一度落ち着いた動きも今回で経験できたので、ここから勢いと落ち着きの良い落とし所を見つけられると良いなと感じます。
演技曲を演者が歌いながらパフォーマンスするのは、どうしてもやりたいのならまあこの際やっても良いと思います。
しかし、シークレットムーブを行う際に突然歌ってる口が止まってしまうのは改善した方が良いでしょう。
いつ秘密の動作を行ったのか、バレバレです。
まあでも、今回のアクトだけを見ると、色々雑なところもありましたが賑やかで楽しい演技でした。
5:再開の約束(たいがーさん)
第1部の最後。
蝶、額縁、花を使った変わった演技でした。
何がしたいのか、何が起きたのか全く分かりませんでした。
自分が表現したいこととお客さんに伝えられている内容の乖離が激しく、完全なる自己満足の演技だったと思います。
手品としても、大きな台やシルクの使用、そして出てくる物の小ささから、まったく不思議ではありませんでした。
演技が終わった後、1人で勝手に三方礼していましたが、このショーはこれで終わりじゃないでしょう。
にもかかわらず三方礼で拍手を求めていました。ショーの構成に食い込んでまで何がしたかったのでしょう。
終始、根本的に意味不明であり、不思議でも面白くもありませんでした。
6:ピンポイントバリア(諏訪孝典さん)
ここから第2部です。
超絶技巧による凄く不思議な四つ玉の演技でした。
かわいそうなことに、四つ玉は前半の演者が堂々とネタバレしてるんですよね……
しかし、それを踏まえても非常に不思議で、技術の安定感に支えられた非常に面白い演技でした。
ちょっと残念な点としては、ロールなどのフラリッシュをかなりアピールしていたことです。
とても手が器用に見えましたし、ああ、そんなところでボールをぴたっと静止できるんだ、という印象を受けました。
すると、とても不思議な現象も、すごく手が器用だから上手いことやってるんだろうなぁ、この人ならできるんだろうなぁという感覚に変わります。
超絶技法を使ったマニピュレーションなら、ちょっと不思議さを伴うようなフラリッシュはあまり多用しない方が良いのかも知れませんね。
それにしても、非常に不思議なマジックでした。
7:金と車と侖(西田明弘さん)
チャイナリング、8本リングの演技でした。
これはもう、うまくコメントするのが難しいぐらいの酷い完成度です。
最初の3本リングの段階で、繋いだり外したりの際にリングが常時ふらふらしっぱなしです。
なので、どんな風に繋がったのか、どんな風に外れたのかはよく分かりません。
3本リングの演技から、1本を台に捨てて、数本のリングを替わりに持ってきてからの4本繋ぎ……
いや、お客さんは今あなたが何本リングを持ってきたかも確認してません。
そして持ってきたリングがバラバラであったことも確認していません。
さらに、数本持ってくるのになぜ1本は台に捨てたのかも理解できません。
何ひとつ、不思議じゃないです。
リングを高く投げ、アクロバティックに繋ぐのかと思いきや一旦キャッチしてから繋ぐ。
なんで高く投げたの?
ルーティーンはマジシャンのご都合主義で、お客さんは理解できず置いてけぼり。
派手でもなく、不思議でもなく、綺麗でもなく、面白くもない。
お願いだから、もうちょっとちゃんと手順を組んで、そしてしっかり練習してから舞台に立ってください。
せめて、人に見せられるレベルにしてください。
8:中継点(堤研太さん)
しっとりとした雰囲気の中で行われる、ミリオンカードの演技でした。
技術的にもモタモタしており、スタイリッシュに感じられませんでした。
ちょいちょい布を使った現象を交えていましたが、何を表現したいのかは分かりませんでした。
クライマックスでパリパリっとした布のような謎の物体が、手から落下……下かと思ったら空中で静止。明らかに、何かに引っかかってぶら下がったような形で静止。これは流石に、当日のミスでしょうか?意味は分かりませんでしたが、ミスであると思って深く追求しないことにします。
不思議ではない、というか、この段階でカードが3人目ですから見飽きた感じもあり、終始眠かったです。
出てくる物に限らず、技法や体の向きまでこれまでの演者と被っている部分が多々あり、そもそもそういうトランプなのかな?という印象ですね。
とは言えそれは、この演者の問題ではなく構成の問題のような気がします。
幕間
コントの中で行われる、マイザーズドリームもどきでした。
マイザーズドリームというよりは、単なるジョークですね。
しかし、ちゃんと手品としても成立しており、掛け合いも非常に綺麗でとてもおもしろかったです。
9:とけいちっく(向井健人さん)
時計をモチーフにした、ウォンドと歯車CDのアクトです。
ウォッチが見れるのかと思って期待したのですが、違いました。残念。
演技に関しては、もう完全に狂気の沙汰でした。何がしたいのか分かりません。
まず使用している曲がメチャクチャで「おはようございます」とか「10時です」とかいう台詞がガンガン挿入されています。
たまたま僕の横で見ていた歯車CD演者に、技術的な部分などの感想を聞くと
「あ、いや、なんか曲の中の10時19分ですとかそういう台詞が気になって、あんまりちゃんと見れませんでした……」
とのことです。
時計のモチーフアクトだったのですが、時計から取り出した歯車の大きさを変えたり、色を変えたり、増やしたり……
時計の針でウォンドをしてるのに4本まで増えたり。4本目は何の針だよ。
それが振り子になって、その先端部分が出たり消えたり。
そして途中でウォンドを針に見立ててチクタク。でも、その針の動きが逆周りなんです。シュール……
クライマックスは時報の音(ポ・ポ・ポ・ポーン)に合わせて振り子が揺れる。その音ならそこは秒針だろうと。
とにかく、モチーフとの関連付けが雑で、何を表したいのかが分かりませんでした。
技術的にも、ウォンドなんかはかなりお粗末な出来で、フリップスティックムーブはほとんどネタバレになっていました。
アラカルトの演技を行うのであれば、使用するそれぞれの演目の基礎はしっかりして欲しいですね。
しかしまあそれを上回る演技曲の異常さで、すべてがそこに集約されていました。
終わった後、僕の周りみんなはこの演技を「おはようございます」とか「ぴっぴぴぴっ」とか「10時18分です」とか呼んでました。
中には「あれは拷問」「苦痛だった」「しんどい」「頭がおかしくなる」とかいう感想も。
手品としては成り立っていない、表現としても意味が分からない、見た人を不快にさせる演技だったと思います。
10:Luna Nokto ~月夜~(Yu-Kiさん)
月をモチーフにした、カードとボールの演技でした。
13歳の現役中学1年生ということですが技術的にはそれなりに安定していたと思います。
ただ、細かいところ、お客さんにタネが見えた見えないとかそういう泥臭い部分はフォローできていなかったように思います。
四つ玉を示す際も、何度も体がぐぐーっと横に向いてしまい、見えてはいけないものが丸見えになっていました。
本来そういう点は、練習のときに逐一、しつこいぐらい「見えた」と指摘して、自然に大丈夫な角度に体が向くよう訓練していけば良いのですが、そこまでまだレベルが達していないようでした。
表現っぽいところも磨くことも大切だと思いますが、お金を取るマジックショーで演技する以上、最低限の基本的な部分は訓練しておく必要がありますね。
とは言えまだ13歳。これからその辺りもどんどん上手くなっていくのでしょうから、期待しています。
演技はというと、やはり表現したいものが曖昧で何がしたいのかは分かりませんでした。
月の形のプレートからのボールの演技、ボールを光か月に見立てているのかなぁと思っていたのですが、そのボールが増えたり減ったりします。
そしてボールが完全に無くなったとき、青色の照明が炊かれます。ああ、月が沈んだ漆黒の表現かなと思ったら、またボールが出てきます。
最後は、また月のプレートが出現して終わります。
意味は分からないのですが、なんとなく綺麗なもの、美しいものを追い求めたい時期なのかもしれません。
まだ深みの無い表現で当たり前。これから深みが増していけば良いと思います。
キラキラ光るホログラムカードでマニピュレーションをしていました。月のプレートもホログラムです。
スポットライトがギラギラ反射し、相当見えにくい印象でした。と言うか、見ていると何度も目に光が入ってきて、見るモチベーションがなくなって来ます。
スポットライトの環境で、しかも客席がそれなりに近いホールで、あんな道具を使うと見えにくくなるのは当然でしょう。
宴会場やキャバレーで、白熱球やサスペンションの少ない照明でこそ威力を発揮する道具だと思います。
自分が表現したいこと、やりたい現象、使いたい道具。それと、お客さんにはどう見えているのかがまだ繋がっていないのでしょう。それは、客層や環境、ホールの構造、どのような発表の場なのかまですべて含めてです。
1部のトリと同じく、演技後に勝手に礼をしていました。コンテストやライブ形式の場ならそれで良いですが、発表会形式のマジックショーで一部の演者だけがこれをやっているとかなり滑稽です。
いま自分はどんな舞台に立っているのか、という部分をしっかり認識できるようになれば、お客さんのことも意識できるようになり変わってくると思います。
なんせ、まだまだ若いのですから、今後に期待です。
司会(菊池圭祐さん)
非常に良かったです。
語り口が楽しく、この人にしかできない言い回しで場を沸かせていしました。
司会が1つの職業として成り立つということを再認識しました。
全体を完全にまとめており、この発表会の進行をすべて司っていました。
司会進行が良いとショー全体も良く見えるものです。完全に、この発表会のキーマンでした。
全体
進行が良く、司会が上手く発表会全体をまとめていたため、見た後のモヤモヤ感でいうと去年よりは少なかったと思います。
ただ、演技それぞれのボリュームは去年の方が充実していました。まあ去年は第1回ということでビッグネームを揃えたらしいので、それも仕方ないかなと思います。
さて、今回は10人の演者のうちで演目が被っていない演者が2人(シンブルとリング)だけでした。
あとは何かしらの部分で演目が被っており、特にカードをメインに使った演者は4人もいました。
その中でも、見せ方や雰囲気まで酷似している演者がいて、これはショーとしてはダメだろうという印象を受けました。
演者の中には本当に、自分がやりたいことをとりあえずやっただけという雰囲気の演者もいて、自己満足の塊を結構見ました。
発表会ということで、普段から練習してきた成果を発表したいというコンセプトなら良いかもしれません。でも、それでお金を取るのはどうかと思います。
やりたいことをやる発表会であれば、必要な経費は出演者や運営で負担して行うのが多くの分野では普通だと思うのですが。
その辺りの意識を疑ってしまうような演者構成でした。これでお金は取れないだろう、と。
そして、トリ演者に中学生を据えたのも疑問です。
マジックソルトという団体のコンセプトは「大学の奇術サークルOB・OG達が引退後もマジックをしたいという情熱を持って立ち上げた団体」だそうですし、発表会の中でもそうアナウンスされていました。
にも関わらずトリが中学生というのは、その根底にあるコンセプトを揺るがしてしまう采配だと思います。
まあ、トリを務める演者がいなくて演者構成ができないという事態は深刻で、悩ましいものです。
なので、トリを務められそうな演者をなんとか外から引っ張ってきて上手く取り纏めるという手段は、仕方がないことかもしれません。
しかし、その扱いがおかしいと思います。
「最後は、現役中学生マジシャンです。」
大学奇術サークルOB・OGの団体で、トリを中学生が務めるって、言うなれば団体として恥ずかしいことだと思います。
そうするにしても、もうちょっと控えめにアナウンスするか、ゲストとして紹介すべきだと思います。
そして、そこまで大々的なアナウンスをされながら、実際トリの風格がある演技かというとそうではありませんでした。
必要以上に、実力以上にハードルを上げられて、これではせっかく出演してくれた彼が可哀想でしょう。
コンセプトを揺るがすような采配は、もっと慎重にするべきでした。これではもう「何でもアリ」の団体になってしまっています。
来年以降も継続するのであれば、今一度、マジックソルトとはどういうコンセプトで発表会をしていく団体なのかを問い直して欲しいです。
団体の継続には、その根底にある思いや団体のテーマは大切だと思います。
まだまだ若い団体ですから、今後いろいろ悩みながら育って行くのだと思います。
今回はかなり迷走した出来でしたが、来年以降にも期待を持って応援したいと思います。
FBにアドレス貼っておきました.
返信削除ちょっとどなたか存じないので何のことかと思いましたが、分かりました。
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