最近めっきり盲学校マジックに関する記録ができていなかったので、整理も兼ねて以前のショーについて書いてみます。
京都下鴨にあるバー、Bourbon House Lucifer(ルシフェル)さんで2013年9月28日(土)に開催した、盲学校マジックのプレショーの記録です。
プレショーってどういう事かと言いますと、晴眼者を対象に盲学校マジックの内容を演じて、晴眼者の立場から色々とご意見を頂くというコンセプトの実験的なショーです。全盲のお客さんを想定したショーだということは事前に確認した上で、バーの常連さんを中心に有志の観客を募って開催されましたので、純粋に「マジックショーしました!」とは言えない内容です。
ストーリー仕立ての進行で、サロンとクロースアップの中間くらいの距離感で演じられるショーでした。演目としては4つで、
・カードバギー
・ウソ発見器
・楽器の予言
・スプーン曲げ
こんなラインナップです。具体的な演技内容としては、本番のショーがまだなのと、当時の演技から現在では変わったところも多々ありますので省略します。
結果的にこのプレショーでは多くの課題を残すこととなりました。特に顕著だったのが、音響効果に対する意識の違いです。このプレショーでお客さんから頂いた意見として「BGMのボリュームが小さい」というものが有りました。実際、音量を控えめに流していたのですが、盲学校のお楽しみ会や文化祭と比べると、ハコが小さかったこともあり「ちょっとボリュームを上げすぎたかな?」というくらいの音量でした。
例えばお客さんにESPカードの図形5種類を確認してもらい、そのうち1枚を選んでもらうとします。その時間は、晴眼者を対象に演じるのと比べて全盲のお客さんを対象に演じるのでは、5倍か10倍か……あるいはもっと必要になってきます。その間、場に流れている音とは何でしょうか。
晴眼者である私たちはBGMだと考えます。しかし実際はBGMだけでなく、カードに描かれた図形を触る音、カードを選ぶ音、選んだカードを伏せる音などたくさんの音が流れているのです。晴眼者にとってはそれらの動作は目で見るので、そんな雑音は情報として処理されませんが、実際にはその場を伝える大事な情報なのです。それをBGMで阻害してはいけないと考えています。
盲学校の文化祭で劇をやるとき、台詞の無い場面や間を大事にする場面でBGMをガンガンに流すということは、あまり無いように感じます。舞台上での足音や、登場人物が小道具を置く音など、何かしらの自然音だけが会場に響きます。
それは確かに、晴眼者が行なう舞台発表としては異様な状況だと思います。しかし、盲学校という文化の中ではそれが自然なのです。
こういったことを踏まえて、晴眼者を対象にプレショーを行なった際に頂いた「BGMのボリュームが小さい」という意見は貴重だったと思います。
最終的に行なう盲学校マジックショーの本番では、お客さんは晴眼者も全盲の方も弱視の方も入り乱れることが想定されます。そんな中で、一体誰を対象としたショーなのかをもう一度見直し、文化や認識の違いにどう折り合いを付けるべきなのかを考える、非常に良い機会となりました。
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