第1部
1:FLAG+MAGIC(白井玄佳)フラッグ
第11回アンタイトルドコンドサートとほとんど同じアクトなので割愛します。
2:See, What did I tell you?(上野峻也)ゾンビボール
人形を使ったゾンビボールでした。何の人形かは分からなかったのですが、遠目にはキティちゃんのように見えました。
曲が、第6回アンタイの京大さんのウォンドとかぶっていたのですが、その辺りはあまり気にしない感じなのでしょうか。
別に曲が誰かと同じになることは問題ないと思うのですが、同じ団体の、アンタイ出場者という有名な演者とかぶることは避けた方が良いのではないかと感じました。
「イッヒッヒ」という笑い声の効果音が何度か使われており、曲の雰囲気も含めておどろおどろしい雰囲気を出したかったのかなと思います。
ですが、ストーリー構成やオブジェクトの設定付けも雑で、なんだかよく分からない雰囲気しか伝わりませんでした。
人形が置いてある台に「Don't touch」と書かれていたのですが、なぜ触れてはいけないのかは最後まで明らかになりません。
正確には、最後に演者が走り去っていく描写はあるのですが、何が怖くて走り去ったのか、この後に何が起きようとしているのかなど全てが曖昧です。
曲の最後も合っておらず、中途半端な終わり方です。
肝心のゾンビボール自体も上手くなく、どこを取っても残念な演技でした。
3:以下、名無しにかわりましてYAMADAがお送りします(山田祥吾)ウォンド
スピード感のあるスタイリッシュなウォンドの演技でした。
単調な現象が続きがちな印象も有りましたが、曲の打点にも合わせており、見やすかったです。
ウォンドが紙テープになるところまでは非常にまとまっていて綺麗な演技だったので、後半が少し冗長に感じられました。
緊張していたのか、指先がすごくプルプル震えていて、それによってウォンドもプルプル震えていたのは残念でした。
また、肩を大きく動かす呼吸を示しのときに行うクセがあるようで、やたらとため息をついているように見えたのも残念です。
4:GOLDFINGER'14(上村健人)CD
道具と曲の変化をマッチングさせようとした、モチーフアクトのCDマニピュレーションでした。
CDのモチーフアクトというと、例えばCDのカラーチェンジの瞬間に曲も変化させたり、CDが消えたときに曲を消す(音量を下げる)といった演出です。
京大さんは、学生のCDマニピュレーションが始まった頃からモチーフアクトをやっていますが、その流れを正当に継いだ演者という印象です。
しかしながら、肝心の演技については、モチーフアクトが徹底されておらず茶番に見えました。
最初の方で道具と曲の関連性を提示しておきながら、途中からその関連性を無視する現象が目立ちます。
また、モチーフに関わる部分でミスをしてしまったのは痛いですね。
現象は起こっていないのに曲の変化だけが先行してしまうと、明らかに「いま失敗したんだな」と分かってしまいます。致命的です。
ミスは仕方のないものと思いながらも、演技の根幹に関わる部分だけは最低限失敗しないレベルにしておくべきだと思いました。
全体的に、モチーフアクトをするなら、もうちょっときちんと全体構成を練るべきだと感じました。
幕間1:エース当ててもらってもええっすか?(高本幸希)
ジャンボカードを使ったサイドウォークシャッフルでした。
すごく当てて欲しそうにしている子供を当てた辺りで、嫌な予感がしていました。
何か大きなトラブルを引き起こしてしまいそうなタイプの子供でした。
しかしながら、演者の子供扱いが非常に上手く、致命的なトラブルを確実に回避しながら、小さなトラブルを上手く笑いに昇華していたと思います。
子供の反応も非常に良く、サイドウォークシャッフルの現象を引き立てる形になっていました。
最後の現象について、子供が上手くハズレのカードを選んでおり、もしそのままいけばスムーズに不思議な現象として終わらせられるはずでした。
しかし、そこであえて子供を当たりのカードに誘導していたのは良かったと思います。
舞台に上がった子供も嬉しそうにしていました。
安全に演技をするならまず選ばないようなお客さんをあえて当て、それによって舞台全体が盛り上がり、チャンスを活かした演技だったなぁと感じます。
良かったです。
滑舌や発声に関しては、基本的な部分ができていないなぁという印象です。
これについては、基礎練習を重ねることで克服できる部分だと思います。
5:Kaiser(田中辰也)グラス
ワインを主体としたグラスプロダクションでした。
非常に厳かな演技でありながら、見た感じのキャラクターがコミカルな印象だったので、最初はそこにギャップを少し感じました。
しかしながら見せ方が非常に上手く、すぐに自分の世界観が作られており、気にならなくなりました。
第1部のトリとして、貫禄のある演技だと思いました。
曲チェンジが多く、しかも雑なので、その度に見ていて集中が切れてしまったのは残念です。
第2部
1:Rising Road(安部亮次)ハト
ハトとカードからバニシングケージという、オーソドックスな演技でした。
演技自体は1つの現象が終われば次へ、という見やすい構成だったのですが、曲チェンジが雑なのが気になり流れが悪い印象でした。
また、ウォンドの演者さんと同じくため息をつくような動きが多く、スタイリッシュに見えませんでした。
最初の礼のときに帽子を取らなかったので、何か帽子に仕掛けでもあるのかなと思ったのですが、その直後に帽子を取って中をあらためていました。
それなら、礼の段階で帽子を取ってしまった方が自然な流れなんじゃないかなと感じます。
2:飛んで火に入るカネの虫(佐々木直)マネー
演者が何かしらキャラクターを演じる、受動的なマネーの演技でした。
お金が出てきたら嬉しい、というストレートな表現なので、このアプローチは非常に見やすいと思います。
ただ、キャラクターを使う演技としては細かい部分の構成が無茶苦茶で、破綻した演出となっていました。
コインが出てきて喜ぶのはお金ということで良いのですが、ジャンボコインでも喜ぶ理由が分かりません。
また、ビルの分裂は完全に能動的に演技しており、それができるキャラクターならコインが出てきて喜ぶ必要は無いのでは?と思います。
出現したコインやビルはアタッシュケースに入れていくのですが、つまりこの主人公は最初の段階で空のアタッシュケースを運んでいるということになります。
何らかの取引の後で空になったのなら辻褄が合うのですが、そういったバックグラウンドの表現もされていません。
手品としては、ジャンボコインのあたりで冗長になった印象はありますが、すっきりまとまったルーティーンでした。
しかし、そこに演出をつけたいのであれば、もうちょっと考えてきちんとした構成にすべきだと思いました。
3:原風景(谷協至)ボール
捨て場を使わない身軽なボールの演技でした。
1つ→4つ,2色→8つ
という感じの、大きく見て2部の構成となっていました。
前半は非常にすっきりとしていておもしろかったです。
特に、しっとりとした曲との合わせかたが抜群に良かったです。
打点に合わせるのは当然として、打点ではない部分にも演者の体の動きをしっかりと合わせていて、流れるように踊っている印象でした。
後半では曲との合い方が、前半と比べると少し落ちており、残念でした。
また手順構成も、前半のすっきりした印象とは打って変わって、後半は複雑で分かりにくい構成になっていました。
前半の空気で最後まで通せると、最高だと思います。
幕間2:クイズ デイ・ドリーム!(坂根史弥)
クイズ番組という設定の中で行われる、メンタルボードの演技でした。
お客さんとのやりとりは軽快で、楽しい雰囲気で最後まで演じられていたと思います。
また、クイズの設定で「不思議な道具」の対象を本来の手品道具から、全く関係ない小道具へとシフトしていたのも良いと思います。
ただ残念なのは、冒頭「クイズ!デイドリーム!」の掛け声で始まり、クイズ番組の設定で話が進んでいくものの、途中からクイズ番組という設定が完全に無視されて、ただのマジックショーになってしまっていたことです。
これだけで、全体の世界観が崩壊してチープな印象になってしまいました。
メンタルボードの演技ですから、手品そのものは「相手の考えていることを当てる」という内容で、それをクイズにするのはアリだと思います。
ですが思うに、クイズ番組なのですから「お客さんが正解できなかったことを、司会者がやってみると正解して、そしてお客さんに賞品をプレゼントする」というプロットは完全に間違いで、正しくは真逆になると思います。
つまり、まず司会者がルール説明のつもりでお客さんの考えていることを当てて(ここは当たっても当たらなくても良い)、次にお客さんに司会者の考えていることを当ててもらう。そして見事当たって、賞品をプレゼントする、ということです。
そしてこのプロットは、少し工夫すればメンタルボードで実現可能だと思います。
アイデアは悪くないものの、細かいところを詰められていない印象でした。
あと、第1部の幕間と同じく、滑舌や発声の基礎ができていない印象でした。
もしかして、サロン演者が発声の基礎練習をそもそもやっていないのではないかと思うほどです。
4:今も夢を(中川喬文)シンブル
京大のここ数年の流れらしい、フラワーシンブルの演技でした。
曲に合ってはいたのですが、シークレットムーブのレディ状態で曲を待つのはあまり良くないと思います。
スムーズにこなせば気にならない動きで、怪しさが目立っている場面が多少ありました。
中幕に当たってしまうトラブルは、演者にとっては焦ってしまうところだと思いますが、落ち着いて対処していて良かったと思います。
今回は1人で見に行っていたので、色について説明してくれる人が回りに居らず、カラーチェンジ部分は色弱には分かりにくい部分が有ったように感じます。
しかしながらどう見にくかったのかと言うと、僕にはそもそも分からない色だったので、何とも言えません。
5:朧月夜(津村有彩・宮雄貴)和風
女性1人で和傘と和扇子の演技から、男性と2人での演技へと移るアクトでした。
女性の部分は、もう動き方や見せ方から空気が違うというか、ハコの雰囲気を一気に持っていったという感じで凄かったです。
丁寧できめ細かい動きの中で、傘や扇子の出現の部分はキチッとダイナミックに決まっていました。
冒頭のディライトがちょっと雑かな?とは思いましたが、それが気にならないくらいメインのアクトが完成されていました。
しかしながら、途中で男性が出てきて2人のアクトになってからがとても残念でした。
男性は登場した瞬間から、女性と空気の違いが見て取れます。
歩き方もぎこちなく、ひとつひとつの動きも非常に雑でした。
小芝居らしいことも取り入れていたのですが、残念ながら男性の方はまるで学芸会です。
女性の方は迫真で、非常に良いサイレントの表現をしているのですが、いかんせん男性とのギャップが激しく滑稽に見えてしまいます。
女性1人の演技だけで充分、後半は要らなかったと思います。
司会(森木田ひかる)
丁寧に司会をこなしている印象でした。
司会者に関する直接的なコメントではないのですが、演技紹介で、第1部2番手の「See, What did I tell you?」だけは英語の発音で、他の英語の演技名はカタカナ読みだったのに違和感を感じました。
どちらかに統一した方がしっくり纏まるとは思うのですが、それぞれの演者のこだわりがあると思うので難しいところですね。
全体:
パンフレットのクオリティも高く、スタッフさんも丁寧で、どんどん完成度が上がってきているなぁという印象です。
個人的には、お喋り演者さんに勢いが有って嬉しいです。基礎的な部分はまだまだ練習不足だとは思いますが、このまま勢いを落とさず頑張って欲しいです。
凄く上手な演者が居る反面、見るに耐えない演技も有りましたが、今後に期待していきたいと思います。
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