2014年12月21日に行われた、第11回アンタイトルドコンサート「志」のレビューを書きたいと思います。
今年も思ったとおり書きます。
1:Fly Away(深町綾音 芦田涼)
関西大学 パラソル
大きな台を用いたパラソル、パンフレットには後見さんの名前が書いてありませんでしたが、お二人での演技でした。
アクロバティックな出し方が結構あり、また三連パラソルなど所謂「奇妙な形の傘」も多く出現していましたので、曲芸じみた印象を受けました。
にぎやかな演技ではあったのですが、不思議さは削がれてしまっていた感じです。
例えば、パラソルが3つ横向けでディスプレイされる場面があったのですが(こんな感じで ->->-> )やはりパラソルそのものが小さく見えてしまい、残念でした。
ギミックパラソルでも、明らかにああいう仕掛けなんだなというのが分かる持ち運び方をしていたりで、せっかくの現象が台無しになる場面がありました。
後見さんがあからさまに台の後ろでゴソゴソやっているのは、興ざめです。
あまりお客さんの目には付かないタイミングとは言え、シークレットムーブは繊細にして欲しいと感じました。
2:THE MYSTERY(今仲優布)
高知大学 ダンシングケーン
2本振りまでを行う、土佐ダンケンの流れの演技でした。
アンタイで今まで演じられて来た高知大学の演者さんと比べると、1本での繊細な動きがきっちりできていて、振り回していると言うよりはちゃんと浮いている、踊っていると感じられました。とても良かったです。
逆に、2本振りはブレやミスが多く、やらない方が良かったんじゃないかなとも感じられました。
そもそも2本振りって、できる動きが制限されてしまうのであまり効果的に不思議さを演出できないと思いますし……
とは言え、なんせ土佐ダンケンの復活ですから、2本振りをしないというのもなかなか難しい選択だと思います。期待している人も居るでしょうから。
ケーンを空中でピタッと静止させるムーブを取り入れるとより良くなるかと思うのですが、それもまた高知の芸風とは違うのかもしれません。
いずれにせよ、久しぶりに土佐ダンケンを見ることができて満足でした。
3:Where Is Next Ending?(天野悠貴)
大阪大学 グラス
台としてバーカウンターとサイドテーブルを用いた、グラスの演技でした。
シークレットムーブがあからさまなのと、台が大きいということで、あまり不思議には見えませんでした。
飲み物としてはワインを主軸に構成されていると思えたのですが(演技名の頭文字を並べるとWINEですし……)バーカウンターとワインって若干ミスマッチなところがあります。
でもサイドテーブルが丸いので、そちらはワインっぽい雰囲気なのかもしれません。
ところが、サイドテーブルに置かれたグラスにはシルクが入っていたりと、全体を通して抽象物と具体物の境目が曖昧な印象を受けました。
4:Box Box Revolution(斎藤駿)
高知大学 シガーボックス
3つから4つまでのシガーボックスの演技でした。
大技のミスがしばしば有ったのは残念ですが、勢いのある賑やかな演技でした。
開始するやいなや、とにかくコールがやかましかったです。
司会から「ジャグリングです」というアナウンスも無く始まった演技なので、お客さんは置いてけぼりを食らっている状態です。コールで盛り上がっている身内さん達を除いて、会場全体が凄く残念な空気になりました。
このショーにおいてジャグリングはイロモノなワケですから、そこで会場を引っ掻き回したらショー全体のクオリティが下がるだけです。
他の演者でも同じようにコールが行われているのであれば、そういうものなんだということで片付くと思うのですが、今回はジャグリングだけで異様なコールが行われていたので、非常に浮いていました。
とまあこれは決して演者さんだけの責任ではなく、構成段階や身内のお客さんの理解からの問題だとも思うのですが、どうやら事前にコールを煽っていたみたいですね。
場にそぐわないコールは本当に残念な空気を作ってしまうので、今後のアンタイではこの辺りにも気をつけて欲しいです。
ジャグリングのクオリティ自体は置いておいて、会場の雰囲気は最低でした。
5:LOVE IS ORANGE(神津あすか)
同志社大学 チャイナリング
ざっくりと、2本→3本→2本→4本→5本のリングルーティーンでした。
1つ1つの動きが非常に繊細で、上手だったと思います。
リングの消失や出現はお客さんにちゃんと伝わっていない印象を受けましたが、メインとなる繋ぐ・外すの現象は非常に鮮やかでした。
終始曲に合わせて動いていたのに、曲の最後だけ合っていないのが残念でしたが、総じて面白かったです。
6:ダヴライブ!(岩下孔明)
大阪大学 ハト
シンプルにハトを何羽か出してから、バニシングケージというオーソドックスな演技でした。
単純ながらハトの出現は非常に上手で、不思議でした。
ベースの強い曲を使っていたのですが、そのベースに動きが合っていないのは気になりました。
途中から曲が大変なことになってしまったのは、音響トラブルでしょうか?
誰に過失が有ったのかは分かりませんが、お金を取るショーでは起きてはならないことだとは思いつつ、完全に防ぐことはできない難しい問題だと思います。
トラブルもありつつ、手品としては非常に面白かったです。
もしも、もしもですが、あれが音響トラブルではなく、そもそもあんな風に曲を編集していたのであれば、それは流石にもうちょっと考えた方が良いように思います。
7:The Six Sensu(上田尽哉)
関西大学 和扇子
和扇子をベースに、ボールやシルクを交えた演技でした。
和扇子のプロダクション自体は非常に鮮やかで、そんなに大きくないものをできるだけ大きく見せるのためディスプレイを工夫している感じでした。
ボールの部分は、ちょっととってつけた感が有り、まだ練りきれていない印象を受けました。
扇子がボールに変化したりシルクに変化したりという部分もユニークで良かったのですが、その流れで扇子・ボール・シルクを全部取り出して見せたのは、この3つを使ってたんだよというネタばらしになっていると感じました。
変化現象が非常にテンポが良く不思議だった分、そこが残念でした。
また、和扇子を畳んでウォンドのように行う部分も、扇子がどれだけ小さくなるかを見せてしまうので、プロダクションとしてはあまり良くないです。
まあマニピュレーションという扱いで扇子を畳む演者はよく見ますし、そうしないと現象にバリエーションを出せなくて難しいところだなぁとは思います。
8:pichação(岡本拓也)
鳥取大学 シンブル
ペイントアクトをベースとしたシンブルの演技でした。
曲にバッチリはめて、勢いのある演技でとても賑やかでした。
シンブルを「指についた絵の具」として扱っていたのは本当に凄いと感じました。
そもそもシンブルって、それが何なのかがお客さんに伝わりにくい道具の最たるものだと思うのですが、それをアクト全体の設定に上手く溶け込ませていて素晴らしかったです。
シンブルをバケツに捨てるシーンは、指についた絵の具を「洗う」という表現としてマイムや動きを工夫するとなお良かったと感じます。
最後の方でペイントのモチーフに関係なく現象が起きていたのが少し残念でした。
もしこの演技を継続して演じていくのであれば、すこしルーティーンをコンパクトにまとめてでも、全体を通してペイントの設定を統一した演技ができるとなお良い思います。
9:家から5kmの奇跡(難波恭平)
近畿大学 ゾンビボール
モルタルボードをかぶったアカデミックドレスの演者による、天体モチーフのゾンビボール・アストロスフィアです。
まず小さな玉を手にとって、それを地球儀の周りに持っていったりしていたので、月のイメージだったのだと思います。
その月らしき玉に布をかけると浮かびます。
最終的にはその月らしき玉が消え、ホリ幕に月が投影されて終わります。
全体的に、場所はどこなのか、なぜボールを浮かべたのか、主人公は何者なのかなど、何がしたいのかまったく分からない構成でした。
ボールが浮くといっても、月をイメージした動きをしているわけではなく、普通のゾンビボール・アストロスフィアの動きです。
ラストも、派手でも不思議でもなく、別にストーリーにオチを付けたわけではないので、終わった感じはしませんでした。
ゾンビボール・アストロスフィア自体も上手ではなく、良いと思える点は有りませんでした。
せめてもう少しストーリーをきっちり付けるか、手品の技術を磨くかのどちらかをしないと、見られた物では有りません。
ストーリーアクトにしても、何かをモチーフにしたボードビル的なアクトにしても、非常にお粗末な完成度でした。
10:cherry perfume(稲垣愛弓)
同志社大学 ウォンド
学生マジックらしいオーソドックスなウォンドの演技です。
スタイリッシュな演技ながら、曲やキャラクターの雰囲気はかわいらしく、上手く個性を出していたように感じます。
打点にもきっちり合わせられており、現象が伝わりやすくて良かったです。
技法自体はまだ荒くフラッシュしている部分もありましたが、おおむね安定していて楽しく見られる演技でした。
ウォンドと同じ色のホリゾント照明を焚く場面があり、そこは見にくいなと感じました。
11:eclipse(野本裕也)
高知大学 ディアボロ
1ディアだけで行われるディアボロの演技でした。
前半、高く投げ上げるというよりは体の近くで技巧的な演技を行っていました。少々ドロップが目立つ印象でした。
後半はひたすらエクスカリバーで、難しい技法も確実にこなしていて凄かったです。
ただ、ずっと無表情のまま首が左右に小刻みに揺れていたので、なんだかそっちばかりが気になってしまいました。
あまりジャグリングを見たことない後輩は、最初から最後まで何をやっているのか分からなく、凄いのかどうかも良く分からなかったそうです。
お金を取るショーのイロモノとしては、たとえ凄く技術的にレベルの高いことをしていても、お客さんに理解されないのであれば改善すべきなんだろうなと思いました。
そして、やはり客席からの異常なコールが浮いています。
後から色々な人と話していても、ジャグリングのコールが酷かったという感想を聞きました。
客席では、コールの瞬間に乾いた笑いと共に「チッ……うるさいな……」という声も聞きました。
なので、空気としては最低でした。
12:Miracle Heart(南木宏之)
近畿大学 ミリオンカード
カラフルなトランプを用いたミリオンカードでした。
カラーチェンジは、カード自体が小さいものなので見えにくさは有りましたが、それでもディスプレイが工夫されており現象が伝わっていて良かったです。
ミリオンカードとしては、出し方の問題か手にいっぱい持ってるカードを撒き散らしているだけに見えたので、不思議には感じられませんでした。
まあそれでもカラーカードが鮮やかで、演技も曲の打点にある程度合わせられていて、賑やかな演技だったと思います。
不思議というよりは、どちらかというとファンカード的な面白さのミリオンカードでした。
13:FLAG+MAGIC(白井玄佳)
京都大学 フラッグ
フラッグとマスクの演技でした。
と言っても上手く融合されているわけではなく、フラッグ→マスク→フラッグという流れです。
フラッグとマスクの間で非常に雑な曲チェンジがあり、完全にムリヤリ組み合わせた感じでした。
フラッグの部分は、大きなものがたくさん出てくるので派手だったのですが、現象が起きる前にモタモタしている部分が多く、不思議とは言えませんでした。
大舞台にも慣れていない印象で、どこか小ぢんまりした動きに見えました。
マスクの部分はしっとりとした演技だったのですが、仮面が出た瞬間に会場から笑いが漏れていました。
狙った雰囲気を上手くお客さんに伝えられてはいないようで、残念です。
特定の国旗をぞんざいに扱うような表現は無くて良かったです。
ただ、国旗の意味について上手くクリアできているわけではないのかもしれません。
ラストのジャンボフラッグはグルジアの国旗でした。グルジア大好きなのでしょうか。
政治に疎いもので、グルジアである意図はちょっと汲み取れなくて申し訳ないです。
司会:高橋由希(同志社大学)
基本的な子音の発音があまりできていなく、発声の基礎は勉強していない印象です。
完全に原稿を読んでいる感じなのですが、ときどき話し言葉(○○してる、など)が出ていたのには違和感が有りました。
まあマジックショーの司会なので本来そんなものなのかもしれません。
ここ数年、そのレベルはちゃんとできている司会者が多かったので、ちょっと気になってしまいました。
拍手の練習は、第8回ではその前にちょっとした手品を挟んでいて、第9回ではカットされていたのですが、また復活したのですね。
第2回の頃から、拍手の強要が不快だという話が出ていたので、今後また考えていくべき部分かなと思います。
全体
全体を通して、マジシャンは個性的であったり非常に上手だったりで、最後まで飽きずに見ることができました。
ただ、ジャグリングのときの会場の空気が最悪で、ショー全体でもなんだか不快な印象を受けてしまいました。
もちろんジャグラーさんの技術的な問題ではなく、会場のコールが酷いという話なので、これさえ何とか改善できればクオリティの高いショーになると思います。
非常に良いマジックがたくさん見られたのですが、全体としては残念な気持ちが残るショーでした。
こんにちは!
返信削除ふと思ったことなのですが、
万博さんの理想のフラッグの国旗の組み合わせのチョイスはどんな感じなのでしょうか?
いつもレビューを見て非常に参考にさせて頂いております。
コメントありがとうございます!
返信削除国旗の組み合わせというと難しいところなのですが、シルクファンや万国旗はいろいろな国の組み合わせで良いと思います。
難しいのは単発で出てくる、1本目のフラッグとファイナルフラッグだと思います。
詳しい話はちゃんとまとめて、またブログで記事にさせて頂きます!
レスありがとうございます!
返信削除なるほど、確かにサラのフラッグと一番最後のフラッグは難しいですよね・・・。
シルクファンや万国旗は国の組み合わせで良いと私も思ってます(^^)
というか、複数枚旗ですとわらわらするのでどれがどれだかわかりませんしね。それこそ全部の旗を日本国旗とかにしない限り(・w・)
万博さんの記事楽しみに待ってます!