2015年3月10日火曜日

スゴいトランプ「Play Fair」レビュー!


届きました。「Play Fair」のレビューです。




以前の記事でも紹介しました、和泉さんによる手品のためのトランプ「Play Fair」です。

詳しくはこちらを見ていただければと思うのですが、KickStarterで出資を募り、見事目標額を達成して完成にこぎつけたそのモチベーションは、さすがとしか言いようが無いです。

そんな出来たてホヤホヤのPlay Fairについて、思ったままにレビューしていきたいと思います。






・フェイスのデザインについて

僕は色弱なので、色に関する印象は一般的なものと違うかもしれませんが、思った通りに述べていきます。

赤のスートについて、見やすくてかつ落ちついた色だなと感じました。
他のトランプだと、オレンジとかワインレッドとか、あるいはそもそも赤くないとかいう場合もあるのですが、Play Fairは非常に良い塩梅の赤だと思います。

字札は、これといって特筆する部分は無いと思います。

絵札は、フチなどに緑が使われています。
USPCのバイスクルや、カルタムンディのナビゲーターなどでは、青や水色が使われているところです。
僕としては、緑のおかげでかえって落ち着いた印象になっていて、リボンスプレッドした際に目に飛び込んでこなくて良いなと感じました。
ただ、妻に聞いてみると、赤の絵札における緑のフチはちょっと目にやかましい印象だそうです。

好みの問題だと思いますが、苦手な人もいるかもしれない、という感じでしょうか。


・ジョーカー、スペードのエース

ジョーカー(写真左下)は、非常にシンプルなシンボリックデザインです。
エキストラジョーカーとの見た目の違いは無く、同じデザインのジョーカーが2枚入っています。

このデザイン、例えばババ抜きする際にはババ感が無いかもしれません、大富豪では最強感が無いかもしれません。
ですが、手品で使うには非常に適したデザインだと思います。

例えばバイスクルのジョーカーって、王様が自転車に乗ってるじゃないですか。
あのデザインって、ときどきキングに関連付けて考えるお客さんがいらっしゃるんですね。
それはとても自然なことなんです。だってキングですもん。
他にも、アラジンのジョーカーは、ウサギが卵から生まれている様子ですね。
オシャレなんですが「ウサギは卵から生まれねーよ!」という違和感を生じさせる原因になります。
タリホーのジョーカーは、ツボにハマる人にはかなりおもしろいらしく、そこからの演技中ずっと笑いを堪えているお客さんも見たことがあります。

とにかく、イラストデザインだと、そういった要らない情報が入っちゃうんですね。
シンボリックデザインにすることで、そんな心配を取り除いています。

「同じデザインのカードを複数枚使う必要がある手品」ではすごく効果を発揮すると思います。
例えばDAKKANのエース以外のカードとか、オイル&クイーンのクイーンとか、このジョーカーで置き換えてもゴチャゴチャせず、なおかつ統一感を出せますから、ひとつの手としてアリになって来そうです。

逆に、オチの部分で魔女のイラストが書かれたジョーカーがババーンと出てくるような、インパクトが必要となる手順には、あまり向いていないかもしれません。

ここも好みの問題であり、どちらか一方を選ばなくてはいけない中で、汎用性のあるデザインが選ばれていると感じました。

スペードのエースもまたシンプルで、しかしフォーエースを並べてみるときちんと主張してくる大きさにデザインされています。

こちらもジョーカーと同様、最後にスペードのエースがババーンという手順には不向きかもしれません。
タリホーみたいにスペードのエースにはとにかく目立って欲しいという人もいますから、最終的には好みの問題に帰着しますが、汎用性は非常に高いデザインだと思います。


・バックのデザイン

バックは、赤のベタ塗りにロゴマークと、シンプルなデザインになっています。
以前の記事で「ノーブランドなカジノのトランプ」と表現しました。確かにそんな感じです。

さて、実際に見てみると、思ったほどの高級感は感じられませんでした。
赤がきついのか、ベタ塗りだからか、エンボスの反射の具合か、なんとも言えないのですが、どことなくオモチャっぽいというか……まあ、トランプなので、間違いなくオモチャなんですが。

これは逆に、僕としては嬉しい点です。あまり高級感のあるトランプやカジノユースっぽさが強いものだと、お客さんから「手品用のトランプ」って思われてしまうんですね。
仕掛けがあるとかそういう意味ではなく、なんとなく手品用に売ってるやつって感じかと。
それがイヤで僕は、オモチャに見えるナビゲーターを使ってるんですが、ナビゲーターはオモチャに見える上、なんだか100均に売ってそうなチープさがあるのです。

Play Fairは、あくまで遊戯用のカードに見えるような気がするのですが、チープさはそんなに感じないです。
「ちゃんとしたオモチャのトランプ」って感じです。
この雰囲気が、手品に使うトランプとしてベストだと僕は思っています。


・箱

箱の表側は、シンプルに赤のベタ塗り、右下にロゴマークと少しの文字です。
ちょっとシンプルすぎて、箱が途中で出現したりするトリックにはあまり向いていないかもしれません。
ただ、赤ベタ塗りの視覚的インパクトは強いので、場合によっては強い効果を発揮するかもしれません。
デックのデザインでは無難に抑えてる部分が多いと感じたのですが、ここはとんがってるなぁという印象です。

箱の裏側が、カードのバックと同じデザインになっています。
また、シールが無いのでシール跡とか、破れたシールとかが貼られていません。
これはもう、手放しに、最高です。
シールがイヤで、ナビゲーターを好んでいますので、ありがたい限りです。
ただナビゲーターは、箱の裏側とカードのバックのデザインが、ちょっとだけ違うんですよね。
Play Fairは、ほぼ完璧に同じにされていますので、それを利用したトリックにも最適です。
これはPlay Fairの、突出したメリットだと思います。


・質感

質感の評価は、はっきり言って好みに大きく左右されるところだと思うので、良し悪しを言うのが難しいですね。

硬さは、割と硬めだと思います。柔らかいトランプに慣れていると、最初はちょっと使いにくいかもしれません。
スプリングは軽快で、カードのバネを利用したショットは、よく飛びます。

滑り具合は、貼り付かず、滑りすぎず、程よいと思います。
リボンスプレッドも均等に出来ますし、逆にDLのような技法で困ってしまうこともないです。
油断して湿度の高い日に放置していると固まってしまいそうですが、まあそれはトランプである以上仕方ないことですし、ある程度メンテナンスしておけば最悪の事態は免れると思います。

裁断は、バッチリです。ファローシャッフルはトップから、ボトムから、ごちゃまぜどれでも問題なく出来ます。

手にもなじむ印象で、さすが手品のために作られたトランプだなぁという印象でした。


・加工性


ちょっとマニアックですが、加工に関して。

まず、サインは出来ます
当たり前のようですが、クラブエンゼルなんかは表面のコーティングの都合上、インクをはじくんですね。
Play Fairはその点については大丈夫で、普通のシャーピーで適当に書いてみたところ、すぐにインクが乾きました。

次に、破ることができます
これは、結構綺麗にまっすぐ破れる印象です。
トーン&レストアードなんかでは使いやすいだろうなと感じました。

折ることに関しては、注意が必要です。
強く折り曲げると、表面が裂けます。
そんなに強く折り曲げないよ!と思うかもしれませんが、四つ折りにするとどこかしら裂けそうです。
サイドと平行の折り目は裂けにくいですが、エンドと平行の折り目は裂けやすいかもしれません。もしかしたら気のせいかもしれませんが……
いずれにせよカードを強めに四つ折にする手順では、ちょっと気をつけたほうが良さそうです。

ピーリングについて、難しいですが、できました。
こう言ってしまうと、難しいのは単に下手なだけじゃないかと言われそうですが、恐らく心材の接着が強めなようです。
百発百中で成功するのは、ひょっとしたらバイスクルなんかより難しいかもしれませんが、とりあえず可能です。
なので、好みのギャフカードを作ろうと思ったとき、手詰まりにはなりません。


・おまけについて

おまけとして、ブランクフェイス(いわゆる予備カード)と、手品用のDBカードが1枚ずつ付いてきます。
使わない人にとってはあまり興味の無い部分かもしれませんが、使いたい人には嬉しいサービスですね。特に問題点は見つかりませんでした。
ブランクフェイスのコーティング剥がしてインクジェットで印刷できるかは試していないのですが、おそらく可能なんじゃないかと思います。
まあこれらはおまけということで、何か悪い点があっても文句を言う部分ではないかなとも思いますが……

欲を言うと、青バックなど色違いバックを1枚入れて欲しかったです。
それによってかなり、出来る手品の幅が広がりますので。
ただこれは、完全に素人意見でして

「この赤い部分を青に変えたら良いだけじゃん!」

と、つい思ってしまうのですが、デザインってそういうことじゃないですよね。
赤バックに合うようにロゴを、ロゴに合うようにバックの色をきちんとデザインされているのに、ここで青バックも考えるとなると、じゃあその青はどんな青なのかとか、ロゴマークの大きさを変えようかとか、それじゃあまた赤バックのデザインも練り直さないと……と、膨大な手間が掛かると思います。
ちょっと追加のおまけカードとなると、それは流石に難しいと思います。
今後もしかしたら、色違いバックの製作があるかもしれない……と思えば、今はこれがベストなのだと思います。


・まとめ

結論として、Play Fairは非常に汎用性の高い手品用トランプだと思います。
大きなメリットとデメリットを挙げますと、

メリット:
 ・デザインや質感に致命的な欠点が無い(これは意外と大切)
 ・箱の裏面がカードのバックと同じデザインで、なおかつシールが無い

デメリット:
 ・色違いバックが存在しない


こんな感じだと思います。
マジシャンの普段使いのレギュラーデックとしては充分アリですし、もっと言えば現状で手品に使われているトランプの中で、使い勝手やデザインなどを考えるとかなり上位に食い込んでくるクオリティだと思います。

そしてそして、もし仮に色違いバックのが製作され、コンスタントに手に入る状態となれば、手品用トランプの選択肢の中でトップに上り詰める可能性が充分考えられます。

Play Fairのこれからの展開がわかりませんが、今後の動きにとても期待したいと思っています!




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