マジケ2025初夏【御嬢様之耳袋】『お嬢様の雑記帳』のレビューです。
お嬢様マジシャンさんによる、メンタリズムやリーディングに関するあれこれです。
ちょっと強気なお値段(5000円)なので、どんな内容なのか気になっている方も多いのではないかと思います。
感想を書いていきますが、結論から言うとまあまあ良かったです。
本書は、ざっくり3つの内容から構成されている感じでした。
具体的には、電球を食べるまでのエッセイパート、霊感詐欺パート、リーディングパートです。
エッセイパートは、正直内容もとっ散らかっていて、回りくどい割に共有知識の整理が曖昧で、何が言いたいのか分からない印象でした。
まあエッセイなので、ここはそういうもんか、って感じで良いかなと思いました。
霊感詐欺パートは、めちゃめちゃ面白かったです。
具体的な霊感詐欺の手法をもって、ビザーマジックと繋げて説明することで、マジックの現象の幅を広げていく試みがなされている印象です。
すなわち、飯を食ったら眠くなるとか、走ると息が上がるとか、そういった当たり前なことをマジックの現象に昇華するヒントが、霊感詐欺という方面から書かれています。
もちろん生理現象に関わることだけでなく、思い込みや儀式的な動作など、多くの観点からアプローチされています。
このパートは結構まとまっていて分かりやすいです。
具体的なトリック案も載っていて、盛りだくさんです。
リーディングパートは、野心的で興味深かったです。
例えばマジックでも、プロの鮮やかなマジックに憧れて始めてみたけれども、最初はなんだかありきたりなものしかできなくて、ちっとも本格的なフェーズにいけない、などと感じてしまうことって初心者によくあると思います。
どうすればプロのような本格的なマジックができるのかと考えるとき(まあ実際は基礎の積み重ねなわけですが)、ありきたりと感じるものと本格的と感じるもののギャップがどこにあるのかを考えてみることは、自分のためにも、誰かに教えるためにも有効だと思っています。
そういったアプローチが、リーディングについて書かれているパートです。
入門的なコンテンツで示されるありきたりな内容から、いかにギャップを超えて本格的なリーディングに進むかが、丁寧に考察されています。
ちょっと本格的なことができたような気分になると、練習が楽しくなってきますので、リーディングの練習をより一層楽しみたい人にはとても有用な内容だと感じました。
まだまとまり切っていない印象もありますが、良い試みだと思います。
全体として、内容は悪くないのですが、電子書籍としての読みにくさがネックです。
まず、目次が機能していません。目次で各項目が何ページにあるのかが書かれていないので、読みたい項目を探すのに一苦労です。
しかも1ページあたりの分量が少なく、ページ数が膨らんでいるので、これはなかなか厳しいですね。
PDFなのでしおりの設定があるのかと思ったら、表紙と中表紙にだけしおりがありました。なんだこれ。
同様に、専門的な内容はちょいちょい挟まれるものの、それらと参考文献が対応付けされていないため、結局どの文献な何の参考なのかが分からないです。
そしてそれを確認するためにページを行ったり来たりするのがまた大変です。
こういった細かい部分の粗さを気にしないのであれば、5000円の価値は充分にあると思います。
マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。
前作からかなりパワーアップしましたね。前作でがっかりして、今回はどうしようかな……と悩んでいたのですが、買って良かったです。
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