2015年12月24日木曜日

レビュー「第12回アンタイトルドコンサート」


2015年12月23日に行われた、第12回Untitled Concert「そこら中にある軌跡」の感想です。



例年のように、思った通り書きます。



開演前


パンフレットの表紙、白黒刷りになっているので「そこら中にある軌跡」の「中に」の部分が黒くなっており、読みにくくて残念です。本来、アピールのために色を変えていた部分だと思うので。

会場に入って思ったのは、最前列が舞台にかなり近いなということです。
アンタイで初めて使う会場ということで色々試行錯誤されたのかと思うのですが、これは流石に、大丈夫なのか?と不安になる近さでした。
実際、演目のラインナップから考えると、ちょっとアウトだった演目もあったのでは?と思ってしまいます。

客入れの曲が、昨年の演者の演技曲なのはちょっとどうかと思います。
リピーターにとっては昨年の演技が思い出されて、どうも今年の内容に新たにワクワクすることができなくなります。
また、曲によってはちょっと客入れに適さないものもあると思います。
例えば昨年のシンブルの曲なんか、客入れで突然「ヘイッ!」って聞こえてきたりで、びっくりします。
1曲のリピートでも良いので、客入れの曲を用意すべきではないかと思いました。


1:war of the rainbow color(川口真依)

近畿大学 フラワー

後見の方の名前がプログラムに入っていないのですが、後見の男性と2人で行われる、オーソドックスなフラワーの演技でした。
華やかな雰囲気で、非常に楽しく見ることができました。
特にメリケンハットの部分のテンポが非常に軽快で、上手いなあと感じました。
曲との合わせ方も、完璧な曲ハメでは無いものの、大事な打点はきちんと押さえていて、違和感無く見られました。

ただ後見の方が、大事な場面でちょっともぞもぞしたり、受け取った花束をギュッとしていたりで、残念でした。
花束のバニッシュは、不思議では有ったのですが、オープニングアクトとしては派手さを欠く印象があり、無くても良かったかもしれないなと思います。


2:Dance(中田一志)

京都大学 ウォンド&シンブル

大半がウォンドで、中程にウォンド&シンブルを挟む構成の演技でした。
曲ハメが見事で、ウォンドとシンブルのリズミカルな現象で打点を綺麗に処理していました。
全体的にスタイリッシュな演技で、楽しく見ることが出来ました。

シンブルのカラーチェンジに関しては、僕は色の区別があまりできないのでそのせいかもしれませんが、ほとんど分からなかったです。
ウォンドの最後の複数本のカラーチェンジは、綺麗なグラデーションを明確に示しており、非常に見やすかったです。

気になったのは、中程のウォンド&シンブルの部分です。
その部分だけ全体の演技の中で独立しており、かなり浮いていました。
ウォンドの先端部分がシンブルになるというオーソドックスなアプローチについても、そこからウォンドの力でシンブルが増えたのか、ウォンドの先に先端部分が再出現してそれが移動したのかなど、何が起きたのかがはっきりしていませんでした。
この辺りを精査するか、いっそ省いてしまってウォンドアクトとして組みきってしまうと、完成した演技になると思います。


3:THE MOON WALTS(姫田綾音)

近畿大学 ライトポイ

ジャグリングです。暗い照明の中で演じられるライトポイでした。
しっとりとした雰囲気で演じられており、また白い衣装のおかげで演者が絶妙に視認できる感じで良かったです。
技術的に難しいと思われる部分が、照明の暗さであまり伝わっていない印象を受けたのですが、まあそれはそれで良いのかもしれないなと思いました。

さて、ここからはこの演者さんに関することではないのですが、司会から特にアナウンスもなくジャグリングが始まったので、始まった段階でこれが何なのか分からなかったお客さんもいらっしゃると思います。
マジックショーの中でイロモノとしてジャグリングを組み込むのですから、明らかに「ジャグリングだ」と分かる演目にするか、ジャグリングである(手品ではない)ということをアナウンスする必要があると思います。
※僕の聞き漏らしで、アナウンスは有ったようです。

ライトポイはこの辺りが非常に難しい演目で、演目の組み合わせによっては、他の手品の不思議さを削いでしまうおそれがあります。

あと、演技の後のブリッジで演技曲を頭出しして使うのは好ましくないと思います。
今回そういう形のブリッジ曲で一番かわいそうだったのがこの演者さんでした。
曲の頭から終わりまで、演技をしっかり合わせてバシッと決めたにもかかわらず、その後のブリッジで同じ曲がまた流れてしまうのは興ざめです。
1曲の使い回しで良いので、ブリッジ曲を用意すべきだと思いました。


4:初恋(辻田莉奈)

関西大学 リング

ボイトコのフローティングリングをふんだんに組み込んだチャイナリングです。
リングが宙に浮いている状態で、繋がったり外れたりします。

ときどきリングの「カコーン」というパイプのような音が鳴っていましたが、基本的には音もなく繋がったり外れたりするか、あるいは曲の盛り上がる部分で音を隠したりしており、細部まで非常にこだわって構成された繊細な演技だなあと感じました。
青スポットと青サスの暗い照明の中で演技が始まり、リングが見えにくいなあと思っていたのですが、全体を見るとそれも納得でき、また演技の雰囲気に合っており、良かったです。

ただ、これもこの演者さんに関することではないのですが、先ほどのライトポイからしっとりとした雰囲気が続いてしまい、客席が少し冷めてしまっていたのがかわいそうだと思いました。
そして、もう本当にこれなのですが、ある演目と同じ舞台に上げてはいけない演目でしょう。
詳しいことはブログだと書きにくいのですが、分かる方には分かって頂けると思います。
演技のクオリティが非常に高かった分、不思議さが失われてしまうような構成の中での演技となり、もったいないなと思いました。


5:Hato trick(樋口航)

関西大学 ハト

ノリの良い曲の中で行われるハトの演技でした。
曲の打点がすごくはっきりしているのに、その打点を完全無視。
というか、ほとんどの打点を微妙に外しているのがとても残念でした。
あと1拍待ったら合うのに!とか、この打点はスルーなんだ!とか思っていると、むしろ途中からなんだか可笑しくなってきて、つい笑ってしまいました。

ケージを使わず捨て場のフチにハトを止まらせていたのですが、演者が捨て場に何かを捨てるときに、フチに止まったハトが捨て場の中を覗きこんでいたのが可愛かったです。

途中で、片手に1羽出して、それが分裂して2羽、そして演者の肩の後ろあたりから3羽目が羽ばたいて出てきたときに、おおっ!と思いました。
でもよく見ると、捨て場のフチに止まっていたハトが1羽減っていました。

捨て場のフチでときどき捨て場の中を覗きこんでいたハトは、最後に消されてしまいました……
悲しい気持ちになりました。

技術的には安定していたかと思うのですが、第1部のトリとしては全体的に残念な演技でした。


6:Glass for you.(田中辰也)

京都大学 グラス

厳かな雰囲気で演じられる、グラスとキャンドルの演技でした。

グラスのオーソドックスな現象をある程度やったあと「コイーン、コイーン」という、なんとも情けない感じの鐘の音がなると、演者はマントを羽織り、仮面を出現させ身に付けます。
仮面を付けてからは、主にキャンドルの演技です。そしてまた「コイーン、コイーン」が鳴ると仮面を外し、最終的にはグラスタワーの出現で締める、という構成です。

ちょっと詳しく書かせて頂きましたが、鐘の音、仮面の出現、そしてそれに合わせたホリゾントの変化に合わせて、演技構成や演者の雰囲気を変えていたのが非常に良かったと思います。
初めは、アンタイでよく見るいつもの京大グラスかなという印象でしたが、実際は細かい部分に色々な工夫がされていて、新鮮味を持って見ることができました。

リピーターも初めての人も、どちらも楽しめる演技だったと思います。


ここで司会者が
「次は珍しい道具を使ったマジックと、ジャグリングの演技を、2つ続けてご覧ください」
とアナウンスを入れます。
珍しい道具って何だろう?と期待しつつ、次の演技を見ました。


7:風車(北山義大)

近畿大学 ウォンド

ウォンドです。珍しくないです。さっきも見ました。
正確には、ウォンドの先端に「かざぐるま」が出現するという演技です。
しかし手順のメインはオーソドックスなウォンドの手順で、なぜこれにわざわざ「珍しい道具」などという期待させるようなことを言ったのだろう?と司会原稿に疑問を持ちます。

と、演者さんに関係ないことはここまでにして。
カラーチェンジで赤→緑を何度か使っていましたよね、たぶん。
僕もそうなのですが、色弱の人からするとこの変化はあまり分からないです。
かざぐるまの色も赤と緑で、非常に見にくかったです。
と言うか、赤と緑の違いをしっかり見ようとすると気持ち悪くなるので、あまり積極的に見られませんでした。

そんな少数派の意見〜と思うかもしれませんが、男性の20人に1人が色弱です。
ということは、あの会場に男女が同数居たとすると、40人に1人の割合で赤→緑の変化は視認できていないということになります。

僕は今回ちょっと頑張って見ようとしすぎてしんどくなったので、これは僕の責任だと思うのですが、色の組み合わせを少し工夫することで、現象が通じていないお客さんを減らすことが出来たということを知っておいて欲しいです。

かざぐるまに息を吹きかけると、ちゃんとくるくる回ったのは面白かったと思います。


8:The Queen of Hearts(内海大樹)

同志社大学 ボール

ボールジャグリングです。
こちらは前半のライトポイと違って、きちんとジャグリングだというアナウンスが有ったので、心づもりして見ることが出来ました。
と言うか、アナウンス無しでジャグリング入れるならライトポイよりこっちじゃないかな?と思いますが、うーん、色々と運営側の事情があるのでしょうね。

演技ですが、演者の見た目や雰囲気と、曲や振り付けの雰囲気が合ってないと感じました。
あなたはそのキャラじゃないでしょ、という印象です。

また、ドロップが非常に目立ちました。
ざっくり数えると、3ボールの部分で3回、4ボールで4回、5ボールだと決まった技が有ったかな?って感じです。
トスジャグラーさんは舞台で演じると、照明なんかの環境次第で非常に難しさを感じると聞くので、色々大変だったんだろうなあとは思いますが、流石に落としすぎでは……と思いました。
コミカルなキャラクターならまだ何とかなりそうなものですが、非常にカッコつける感じだったので、もうどうしようもないです。

カーテンコールで、7ボールを投げてひとつもキャッチしないというギャグをされていたのですが、演技が演技だっただけにちょっと笑えない。

まじっく◇うえぽんの公式twitterアカウントのツイートで
「こんにちは。僕はボールのへいほー(ステージネーム)、こっちは光る学費。」
とコメントされていたのですが、今回の演技は
「じゃあそれは、落ちる入場料かな?」
と思いました。


9:ヒゲ CAN FLY!(根来冬太)

関西大学 ?

登場から、特に何の現象も起きることなく、どうやらトラブルらしく、長い長い礼のあと暗転。
演技続行不可能による「自落ち」というやつでした。


10:TRICK☆STAR(赤江冬美)

鳥取大学 CD

特にキャラクターやストーリーは付けず、CDをあくまで抽象物として扱うCDマニピュレーションでした。
技術も安定しており、動きも軽快、曲ハメも完璧で、雰囲気も良く、最高に楽しかったです。
この直前に大きなトラブルが有ったにも関わらず、堂々とした振る舞いで持ち直し、白いCDの5枚出しの場面ではもう完全に客席の空気を持って行っていました。
CDのインターロックで面白いと思ったのは初めてです。
圧巻でした。

でも赤から緑へのカラーチェンジは、別の色にして欲しかったです。
CDぐらい大きな面だと色の変化自体は視認しやすいのですが、やはり色弱にはしんどいです。


9:ヒゲ CAN FLY!(根来冬太)

関西大学 ダンシングケーン

自落ち後、演順入れ替えを経ての、再登場です。
これについては、運営スタッフの機転の効かせ方が素晴らしいと思います。お見事です。

棒の上端に風船をつけると、棒がフワフワと浮かぶ、というところから演技がスタートします。
その段階でまず疑問なんですが、風船を付けて浮かぶのって別に不思議じゃないですよね。
物理的には〜とか、自由自在に操れることが〜とか言おうと思えば言えるのですが、浮かぶようなものを取り付けたら浮かぶって、それはどうなんだろう?と最初は思いました。

ところがその後、風船を割ると風船のデザインが演者のシャツに移り、そのシャツでおまじないを掛けるとやはり棒が浮く、というシナリオに持って行っていました。

これは納得で、ああなるほど、そういうストーリーなのかと思った矢先に、棒が分裂します。なぜ。

この辺からシナリオがもう破綻していて、1本つかんでおまじないを掛けるようにもう1本を操るなど、ダンケン二本振りではよく見る現象なのに、意味不明に感じたまま演技が終わりました。
さほど安定感があるわけでもなく、シナリオも上手く繋がっていなくて、なんとも謎な演技でした。

そして、これまた演者さんに関係あることではないのですが、本当にもう、これもまたフローティングリングと同じく、ある演目と同じ舞台に上げるなんて呆れます。
ひとつのショーの中で、ある演目が別の演目の不思議さを殺すことになっていました。これは双方の演目にとって良くないことです。


11:燁(古賀優実)

関西大学 和妻

扇と和傘を主軸にした和風の演技でした。
パンフレットに名前が無いのですが、男性と女性の後見が1人ずつ居ました。

動きがのっそりしていて、厳かな雰囲気が無く、そういう新しいタイプの和妻がやりたいのかな?と思ったのですが、後見の男性は厳かな動きで、なんだかミスマッチしている感じが有りました。

手の中に握りこんだ紙吹雪を、扇でパタパタとあおいで撒き散らすところでやたら時間を取っていたのですが、それは別に現象じゃないです。
その後にどんな現象が起こるかなあと思っていたら、普通に手の中が空になったことを示していて、思わずずっこけてしまいました。
まさか何もしないとは。
その後、何事もなかったかのように、和傘のプロダクションに移りました。

ロードで硬直してしまったり、明らかに持ってきた扇を広げていたりと、手品としてもお粗末でした。
非常に残念なトリ演目でした。


司会:吉川菜摘

名古屋大学

原稿を読んでいるだけの印象はありながら、非常に丁寧に喋る方でした。
でも、噛む場面は多かったです。
また、k・gの音にhが入るクセがあるようで、ところどころ詰まってしまっていました。
しかし、そのクセを克服しようとしたことは伝わりまして、決してクオリティの高い司会だったとは言えませんが、頑張っているんだなあと感じました。


全体

それぞれの演技自体は、クオリティの高い演者もいつつ、またそうでない演者もいつつで、合同発表会らしいバラエティ豊かな演技だったと思います。
また、大きなトラブルが有ったにも関わらず機転を利かせた当日の対応は、素晴らしかったと思います。
今年はお客さんのコールも少なく、例年と比べて落ち着いて見ることが出来ました。

やはり一番残念なところは、演目構成でしょう。
明らかに、同時に上げてはいけない演目が混在していました。

ライトポイと浮きモノです。

そしてそれは、演者選出のときに少し調整すれば避けられたはずですし、避けるべきです。
来年は、そのようなことが起きないよう願うばかりです。



あ、あと、アンケートの「どこから来たか」に
「大阪府」「大阪市」「京都府」が有って「京都市」が無かったので、どこにマルするか悩みました。

会場が大阪だから……
ってことだと思うのですが、この書き方、京都人だとキレると思うので、ご参考までに。

4 件のコメント:

  1. アンタイ裏方にいたものです。
    ポイに関してはウォンド&シンブルの前に『マジックとジャグリングを2つ続けてどうぞ』という感じで入れたのですが、お客さんが気づけなかったら意味ないのでもっと強調したほうが良かったですね。
    演目及び演順に関してもその通りだなと思います。どちらも来年以降の委員には気をつけてもらいたいですね。
    ダンケンは暗転までに時間がかかってしまったことが気がかりでお客さんからどう見えたのかなと思っていたのですが、再登場に関してはそう言っていただけて安心しました。ありがとうございます。

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    1. コメントありがとうございます。
      ポイは僕の聞き漏らしのようで、申し訳ありません。修正致します。
      ダンケンの暗転は、あのレベルの状態になるともう仕方ないと思います。僕も舞台でバタバタするトラブルを色々経験しましたが、今回のフォローはすごく良かったと思います。

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  2. リングは本当にもったいないと思いました。ブルーライト被りの演技を連続でやるのはやはり飽きがきてしまいますね。それよりもまずいことはありますが。
    ディスク、ほんとに面白かったです。鳥取大学最近凄すぎる。ダンケンの暗転からのあの演技は感服に値します。
    ダンケンは個人的に風船つけるのはおもしろかったのですが、2本振りになってから風船完全無視だったのが非常に残念です。ケーンの分裂には思わず、おおっ!と声が出てしまいましたが。
    ポイからしか見ていないのですが、マジックショーとして非常に楽しく見ることが出来ました。来年もまた行きたいなと思えるショーだったと思います。

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    1. コメントありがとうございます。
      やはり合同発表会なだけあって、色々なタイプの演者さんが見られて良かったと思います。来年も楽しみですね。

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