Denis Behr『Handcrafted Card Magic Volume 3』日本語版(富山達也 訳)のレビューです。
これまで1巻と2巻は小林洋介さんによって日本語に訳されていたのですが、3巻が出てから誰も訳してくれなくてみんなが困っていました。
この度ついに富山達也さんが3巻を日本語に訳してくれましたので、レビューします。
・Routined Arith-Mate-ic
Alex Elmsley の「Arith-Mate-ic」を3段階に拡張した手順です。
3段階の現象がとても効果的かというとそこまででもないけれども、決して冗長ではないという印象です。
第3フェーズは現象の説得力を増していて、とても良い終わり方になっていると思います。
セットアップに関するアイデアは素晴らしいです。これは良い方法を知りました。
・Extended Gambling Demonstration
畳みかけるようなギャンブリングデモンストレーションです。
単発で終わりそうなギャンブリングデモンストレーションを、きちんと手順にしていて感心します。
クライマックスはブリッジの手札を配るような演出になりますが、ブリッジでこの手札にどういう意味があるのかを私が知らないので、演出としてドラマチックになっているのかどうかが判断できなくて残念です。
・Mating Season
3段階のマッチング現象ですが、それぞれの段階でもう手順が完成しています。
第1段階、第2段階を単独で演じるだけでも充分な効果がありそうです。
第3段階はクライマックス感がすごいので、全3段階を一連の流れで演じる際の締めとして抜群のインパクトです。
セットアップに関するアイデアは、元々のスタックを知っているとまあそうだろうなという感じですが、勉強になります。
そのセットアップのアイデアを含めて、スタックの移行が全体的に面白いです。
・The Dark Force
机の下でカードをひっくり返してもらう形のフォースです。
大胆なようで、細部まで慎重に練られた手堅い手法です。賢い。
・On the Bottom Deal
ボトムディールのヒントです。
・Mr.Luckiest
即興的な場面でのギャンブリングデモンストレーションですが、技術的にすさまじいです。
最後に大胆にアレするところが結構興味深くて、参考になります。
・Photographic Memory
記憶術のデモンストレーションです。
うおおすごい。演出も良くて、完成されています。
やってみたいですが、大変そうです。でも、絶妙にできそうな気もします。
これだけのために本書を読む価値があります。素晴らしいですね。
・The More the Merrier
複数の観客に選ばれたカードをどんどん取り出します。
これはすごい手法です。応用も効きそうな、とても便利で賢い方法ですね。
・Haunted Herbert
ホーンテッドデックです。
良い感じで気持ち悪く、複数のカードが出てきます。
面白い動きです。
全体的に、良い手順ばかりが載っています。
バリエーションも豊富なので、多くの人にとって自分に合った手品が見つかるのではないかと思います。
特に「Mating Season」「Photographic Memory」「The More the Merrier」はオススメです。
訳者直販サイトやMAJIONで買えます。紹介ページで「Haunted Herbert」の動画も見られるので、ぜひチェックしてみてください。
以下、おまけです。
Denis Behr『Handcrafted Card Magic Vol.1』日本語版(小林洋介 訳)
・Brute Force Opening
お客さんの選んだカードを見つけるオープナーですが、そこから畳みかけるように現象が続きます。
割と好きです。似た感じの手順をよく演じるのですが、同じ路線のバリエーションを増やすのも悪くないなと思いました。
・Prop
好きなランクのフォーオブアカインドをポロッと出します。
方法がいかついですが、見せ方が面白くて応用が利きそうです。
・A Trick for Allen Kennedy
センターディールのデモンストレーションです。
笑っちゃいそうな解決策かと思いきや、この後に演じる手順への接続などはなかなか興味深いです。
・Magic Monthly
2人のお客さんに対して、誕生月のフォーオブアカインドを取り出すアイデアです。
ちょっと力技ですが、2人のお客さんに演じる際のスタイルなどは参考になります。
・Finding The Way Home
スタックに関するあれこれです。
特にタンタライザーに関する記述が参考になり、色々と使いどころがありそうです。
・A Gambling Demonstration
第3巻の「Extended Gambling Demonstration」の原型です。
こっちのほうが好みかもしれません。クライマックスはやはりブリッジをよく知らないので、良いのかどうかがわからないです。
・Oil & Water
赤黒3枚ずつのオイルアンドウォーターですが、最終的にはデック全体に現象が起きます。
良いプロットですが、方法がなんかすごいことを言っています。できる気がしません。
赤黒3枚ずつの部分は普通に面白いです。
・Oil & Water Finale
割りピンを使ったオイルアンドウォーターです。
方法よりも、クレジット表記でほほーとなりました。
・Gray Matters
グレイコードを使ったアイデアです。
ESPカードとか、あるいはもっと特殊な道具立てに応用すると活きると思います。
Denis Behr『Handcrafted Card Magic Vol.2』日本語版(小林洋介 訳)
・The Green Card
予めクリップに挟んでおいたカードが、お客さんのサインカードです。
バックの色を上手く利用して、結末が予想できないように構成されています。
途中の部分をアレンジして色々遊べそうです。
・Two More Allen Kennedy
第1巻の「A Trick for Allen Kennedy」に続いて、センターディールっぽいあれこれです。
こちらは即興的に演じられるようになっているものの、超絶技巧のデモンストレーションというよりはもはや超絶技巧そのものなのでは、という感じです。
・Home Again
第1巻の「Finding The Way Home」に続いて、スタックに関するあれこれです。
スタックを保つということに関する考え方が、割とためになります。
・Messy - The Director's Shuffle
トライアンフです。
面白い。マジシャン相手に良さそうです。
・Stop It
予言を紙に書いて行うストップトリックです。
面白い!シンプルに良いです。これはやってみたいですね。
・Shuffled ACAAN
ACAANです。
上手くできれば強烈に決まると思いますが、簡単ではないです。
・Suit Surprise
13枚のカードを取り出して行われる手品です。
独特な現象ですが、上手くハマればすごいインパクトです。
ちょっと不安なところがちょいちょいあるので、どう解消するかが考えどころだと思います。
・Herbert - The Trained Rubber Band
輪ゴムがカードを見つけます。
全体として良い手順で、特に第2弾がビジュアルで面白いです。
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