2024年5月18日土曜日

レビュー『ゲッポ/GEPPO』


マジケ2024春【さも/Samo with ふれむ】『ゲッポ/GEPPO』のレビューです。


マジケ過去作「スグスチェニア・スローカード」「アニェッホ」などで知られる さもさんによる作品集です。
動画コンテンツで、4つの作品が解説されています。

マジケ前に、収録作品の1つである「全手動アンビシャスカード」のPVが公開され、これはマジックなのかどうなのか?ふざけているのか?何を見せられているんだ??と界隈を少しざわつかせた作品集で、本当に大丈夫なのか心配しながら見ました。
感想としては、意外とおもしろかったです。

以下、収録作品を1つずつレビューしていきます。


・全手動アンビシャスカード
手動でアンビシャスカードを行うパケットトリックです。
これが問題の作品なわけですが、フルの実演動画を見れば、この作品自体はふざけているということが伝わる演技になっています。
もちろん手品として成立していないのですが、このふざけた動き自体が次の作品“全手動オイル&ウォーター”につながる布石となっています。

・全手動オイル&ウォーター
手動でオイル&ウォーターを行うというプロットのパケットトリックです。
が、お客さんが想像している動きだとすると辻褄の合わないことが起きていて、不条理な違和感を抱かせてくれる手順になっています。
つまり、“全手動アンビシャスカード”で一旦ふざけて、お客さんに「手品じゃないじゃん」と思わせておいてから、こちらの“全手動オイル&ウォーター”で、お客さんは「またまたふざけてくれちゃって~」と思いながら、でも演者の操作を頭の中で追いかけてみると「あれ?そうはならなくない?」と考えてしまうようになっています。

ここまでの2作品は、続けて演じる一連の手順として作られていますので、まだ見ていない方は一連の手順と想定して見ると楽しめると思います。
例えば悪趣味な試みですが、この2作品をさもさんのような明るい雰囲気で演じれば、へらへらしながら本当は何も分かっていないお客さんを観察することができそうです。


・たきのぼりフォース
スプリングを使ったフォースの方法です。
例えばカットやドリブルを制御するためにギミックカードを使うことができるように、スプリングをギミックのような仕組みで制御する試みで、“たきのぼりフォース”はそれをレギュラーカードで行う手法の提案です。
実演にきちんと現象があるのも嬉しいです。単にフォースの技法を見せられているのではなく、手品として演じられているので、見ていて楽しいです。


・クラッシュ・エーセス
ラファエル・ベネター“Karate”のプロットに、沢浩“クラッシュダイス”の見せ方を取り入れたような手順です。
単に分裂する枚数が増えただけのようですが、カードが破裂する感じで飛び散るようきちんと工夫されていますし、あとは細かい処理などにも気を配られた手順になっています。


全体として、予想以上に良かったです。
もしも全部ふざけていたらどうリアクションしようかとビクビクしながら買ったのですが、普通にちゃんとしたアイデアが解説されていてホッとしました。
500円なので、気になっている方は試しに買ってみて良いと思います。

マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。
ちなみに動画のDLシステムは、さもさんの自作だそうです。それが一番すごいわ。

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