2022年7月3日日曜日

点字版の「巨人の肩に触れる」を公開しました

「巨人の肩に触れる 盲学校マジック作品集」の点字版データを無料ダウンロードできるようにしました。

BOOTHのネットショップの販売ページにて、pixivのアカウントを作成してログインしていれば、「無料ダウンロード」のボタンからすぐダウンロードできるようです。
ZIP形式でダウンロードされますが、解凍するとBSEファイルが入っていますので、PCならTエディタや点字編集システム(WinBES)、機器を使う場合はブレイルセンス、ブレイルメモなどで読めると思います。

本来はサピエ登録基準を満たした形式のBESファイルにしたり、点字技能師による校正を行ったりすべきなのですが、個人的な点訳ということでご容赦願います。


以下、このような形での無料公開となった経緯をお話しします。

巨人の肩に触れる」は盲学校マジックに関する冊子で、出した当時に点字ユーザーからも読んでみたいという声を頂いていたり、また盲学校マジックという活動の今後の広がりを考えて、点字(あるいはテキストデイジーなど、墨字を読めない・読みにくい人でも読める形)での提供をすべきだと思っていました。
もっと言えば、盲学校マジックという活動にこれだけ取り組んでいる本人が、自分の書いた盲学校マジックに関する本を墨字でしか出さないってウソでしょ、信じられない。とまで考えていました。

そういった理由で点訳に取り掛かり、2022年5月頃には個人での点訳が完了していたのですが、どういう形で公開するかに悩みました。
というのも、手品の発表という側面と、点訳という側面それぞれの観点から、ちょうど良い落としどころを見つける必要があったからです。

手品の発表という側面から言うと、やはり手品のタネに関する解説を無料で誰もが簡単にアクセスできる形で公開するというのには抵抗がありました。
たとえオリジナルの作品でも、過去の多くのマジシャンの作品が土台となっていますし、むやみやたらにタネを知る人を増やすという行為は、その手品の価値を落とすことにも繋がります。
公開するとしても、少し値をつけるとか、墨字版(PDF版)を買ってくださった方にのみ無料提供するとかした方が良い気がします。

しかし点訳という側面から言うと、一般的に点訳データは視覚障害(あるいは墨字が読みにくい何らかの理由)のある人に無償で提供されます。
これは結構難しい問題なのですが、点訳(著作物を点字で複製すること)は法律上、活字原本の著作者の許諾なく自由にやって良いと認められていて、また法改正でデータの公開も認められました。
なので活字原本の著作者に著作権料が支払われるケースはほとんどないそうです。なるほど。
なんなら点訳データを有料で販売しても、それを買った別の誰かがデータを複製して自分のサイトなどで勝手に公開しても問題ないらしいです。すごいですね。
そういったことから、点訳データをあえて有料で販売しても著作者・点訳者にとって得にならないということと、あとはもちろん福祉的な観点も大いにあって、点訳データは一般的に無償公開されています。

さて、今回のケースは点訳者も活字原本の著作者も私ですし、何をどうしても別に問題はなかったのですが、なんか有料にするのは違うなあという気持ちがずっとあって、なかなか公開に踏み切れませんでした。

結果、最終的に「墨字の底本も一緒に並べて販売する」という落としどころにして、気が向いたらそっちも買ってくれると嬉しいな、という(ドネーションウェア、カンパウェアのような)気持ちで公開しました。
これが最適な形とは全然思えていないのですが、ずっと悩んで公開を先延ばしにし続けるのも良くないので、自分に締め切りを設けて思い切って(締め切りの日の夜に)公開したというのが一連の経緯です。

で、そうなるとこの機会に過去に出した電子書籍も並べちゃおうということで、いろいろ販売開始しました。
もともと、本は絶版になると買えなくなるから後からでも電子版を出して常に手に入る状態にして欲しい!と私自身が思っていて、じゃあまずは自分の出したやつくらい常に手に入る状態にしないと筋が通らないと思っていたので、ちょうど良かったです。

BOOTHを選んだのは単純に、同人マーケットというコンセプトが合っていたからです。
ネットショップ開設記念の新作も出しましたが、それはまた別の機会で紹介しようかと思います。

最後になりましたが、ショップページはこちらです。
よかったら覗いてみてください。

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