2023年8月8日火曜日

レビュー『The Ron Bauer 2008 Lecture (Revised Edition)』

Ron Bauer『The Ron Bauer 2008 Lecture (Revised Edition)』のレビューです。

最初に、すべての学生マジックサークルに1冊ずつ置いておいて欲しい冊子です。

学生マジックサークルって、地域の子供会や高齢者福祉施設なんかから、急にマジックショーを依頼されたりしますよね。
で、大体そういうときの依頼内容ってサロンマジック的なシチュエーションだったりするのですが、サロンマジック主体で活動している学生マジシャンってあんまり居ないと思います。(多くはクロースアップかステージがメインな印象です)

それでもなんとかサロンマジックで20分くらいのマジックショーを構築しないといけなくて、ネタ探しや演じる順番にてんやわんやした経験のある元学生マジシャンさん、胃が痛いですね。
そしてそれらを後輩にも継承できるよう工夫して、サークル内で何かしらの型みたいなものを作ってきたOB・OGの皆様、お疲れ様です。

本書の前半は、いくつかのマジックを組み合わせて実践的なアクトを作るということについて、その考え方や具体的な方法をまとめた内容になっています。なぜ学生時代にこの本に出合えなかったのか……

特にFormat の項目では、子供会などである程度マジックをやってきた人にとっては当たり前な、アクト構成の基本的な型が載っています。
急にサロンマジックを依頼された学生マジシャンさんは、ここだけでも読んでおくことでかなり助けになると思います。もっと早く知っておきたかった……

そして、実際にそのFormat に沿った具体的なマジックとして「The Big Bag of Tricks & The Little Black Hat」というアクト構成が解説されています。
このBig Bag 自体がとても有用なアイデアですし、そっくりそのまま演じないとしても、大まかな枠組みや細かい工夫の部分で真似できるところがたくさんあると思います。
また、アクト構成の中で演じる具体的な演目については解説されていないのも面白いですね。一応、著者の別のノートが参考に挙げられていたりしますが、それらを読む必要はなく、アクトの中に適切にはまる演目を自分で探して来たら良いです。

アクト構成の理論というと、トミー・ワンダー『アクトの作り方』で考え方の部分を学んだり、ヘルダー・ギマレス『リフレクションズ』で具体的にスリー・アクト構造を勉強したりというのが今の主流かもしれません。
しかし何というか、急にマジックショーを依頼されて慌てているときって、まだそういう高尚な次元までたどり着いていないんですよね。
とにかく何とかして、地域の子供会で20分のサロンマジックを演じ切らないといけない、さてどうしたら良いんだろう、誰か助けてくれ。みたいな感じです。
そういうときに力になってくれる内容です。本当に、部室に1冊置いておくと良いです。

後半はカードマジックの技法「TTT」と「RAP」の解説と使用例です。著者の有名な技法らしいので、興味があれば面白いかなという感じです。

前半だけならほんの16ページなので、洋書を読むきっかけとしても良いと思います。
国内ではほとんど取り扱いがないようですが、とてもおすすめなので全国の学生マジックサークルの代表さんは、ぜひ何とかして入手してみてください。

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