Werner Miller『Deal Mix & Spell』のレビューです。
数理的原理を用いたセミオートマチックなカードマジックの作品集です。
Lybraryで無料で手に入るので、持っている人も多いと思います。
ですが、わずか10ページほどの中に28作品が図もなくみっしりと詰まっていて、読む気がなくなってしまったという人がほとんどなのではないでしょうか。
私は驚くべきことに全部読んだので、どんな感じかレビューしてみたいと思います。
結論から言うと全部読むのはキツいですが、面白い作品もちらほら混ざっています。
1作品ずつどんな内容かコメントしていきますので、気になるやつだけでも読んでみると楽しいんじゃないかなと思います。無料ですし。
面白かったやつには★マークを付けます。
1.Royal Fluff
ロイヤルフラッシュの5枚から選ばれたカードが、ある操作をすると出てくる。
出てこない場合もあるけれども、最終的には一応出てきます。
★2.Royal Liar
絵札12枚のうち覚えたカードが、スペリングで出てくる。
ここで使われている原理は別の作品集『Enigmaths』シリーズで何度か使われる、とても興味深く応用性の高い原理で、しっかり考察すると面白いです。
ただ、この手順は計算が間違っているようで、そのまま演じると現象が起きない場合があるため、自分で直す必要があります。
3.French Sandwich
適当なスートの13枚から1枚選んで、混ぜたり配ったりひっくり返したりゴチャゴチャしていくと選んだカードがサンドイッチされる。
ゴチャゴチャしています。
4.Auto-“Mate”
ハートとスペードのカード何枚か使って、選んだカードのメイトを探す、ウソ発見器のプロット。
ウソをついても良いと言いながら、ついても良いウソが限定的なのが新鮮でした。
5.Lonely Stranger
赤いカードと黒いカードを何枚か使って、客の選んだカードを見つけ出す。
途中で手順が分岐するやつなのですが、どう転んでも独特な操作をする必要があり、アンラッキーパターンしかなくてやるせないです。
6.As Often As You Want
何枚かのカードとクラブのエースを使って、客の選んだカードを見つけ出す。
混ぜる部分の原理だけ面白いかな。
★7.Treasure Diver
客にカードを選んでもらい、ダイバーに見立てたカードを潜らせて宝探しをさせると、客のカードを見つけて浮かび上がってくる。
演出も面白く、シンプルでかわいらしいパケットトリックです。
8.Circles & Squares
ESPカードの丸と四角を使って、どちらかのシンボルだけを分離して取り出す。
面白いけれども、もうちょっと手順をシンプルにできたのでは……?
★9.Discard Eight
2組のESPカードから1枚選んでもらい、残りを数えながらカードを捨てていくと、選んでもらったカードと同じシンボルが残る。
面白い!シンプルで良い原理。これに気付いたとき、めっちゃ気持ちよかっただろうなあ。
10.Color Triplets
赤と黒のカードを使った、スペリングのオイルアンドウォーターみたいな感じ。
状況次第で急にゴチャゴチャしだすのが残念です。
11.Four Black Cards
これもスペリングのオイルアンドウォーター的な。
「10.Color Triplets」と比べるとシンプルですが、絶対そうなるのねって印象に見えて、手品と言えるか微妙です。
12.Undo
2人の客がそれぞれパケットを持ち、そのうち1枚を交換するけれども、配りなおすと元の所に返ってきている。
そりゃあ配りなおしたのだから、返ってくることもありますわな……
★13.Another Color Separation
赤と黒のカードを使って、赤と黒を交互に取り出す。
これはそこそこ面白いです。特に5枚ずつのバリエーションは始まりの部分がシンプルで、アンチオイルアンドウォーターのプロットになりそう。
14.Red/Black Sandwich
赤と黒のカードを使って、さらにもう1枚加えて、混ぜたり配ったりひっくり返したりしていくと加えたカードがサンドイッチされる。
ゴチャゴチャしています。
15.Matriarchy
ハートのカード13枚を使って、選ばれたカードを見つけ出す。
「6.As Often As You Want」のバリエーションで、混ぜる原理をうまく使っています。
16.Any Diamond
ダイヤのカード13枚を使って、選ばれたカード2枚を見つけ出す。
「15.Matriarchy」と同じプロットの別解と言えそうですが、こちらはカードをコントロールする原理が面白いので、また別の応用が利きそうです。
17.Found By the Joker
適当なスートの13枚とジョーカーを使って、選ばれたカードを見つけ出す。
14枚を7枚ずつ2組でなく、2枚ずつ7組に配り分けるところが新鮮でした。
★18.The Happy Medium
ESPカードを使って、選ばれた2枚と同じシンボルを候補を絞りながら見つけ出す。
面白い!ESPカードの性質にマッチしたタンタライザーのようなプロットで、原理も面白かったです。
19.Anyone Seeing His Card?
客にカードを覚えてもらい、数枚ずつ見せていって、もしそこにあったらどれなのか特定する。(説明が難しい)
これは、もはや手品じゃないと思う……
20.The Last Card
クラブのカード13枚を使って、選ばれたカードを見つけ出す。スペードとハートの場合もできる。
有名な原理を応用した手順で、もしダイヤの場合のアウトがあればスートを選ばせられて良いなーと思ったら、次の「21.Not That Diamond」がダイヤの場合のアウトでした。
21.Not That Diamond
ダイヤのカード13枚を使って、選ばれたカードをスペリングで出す。
決して綺麗な手順ではないですが、「20.The Last Card」をやろうとしてダイヤが選ばれたときのアウトとして使えます。
22.Another Negative Clue
スペードかハートの字札10枚を使って、選ばれたカードをスペリングで出す。クラブの場合もできる。
今度は逆に「21.Not That Diamond」のプロットをダイヤ以外でやろうという試みです。
こういう、手順を作る際に空いた間隙は別の手順で埋めたいという気持ちはめっちゃわかります。なんだか他人の気がしません。
23.Detour
数枚のカードを使って、客のカードじゃないカードが、客のカードを見つける。
スペリングを使うタンタライザーという感じで、まあふつうです。この作品集の中で一番ふつうかもしれない。
24.Hybrid
絵札12枚を使って、選ばれた絵札のスートとランクを当てる。
ユニークな原理ですが、ちょっと使いにくいと思います。
★25.Misleading
4枚のクイーンと4枚のキングと、無関係な字札2枚を使って、クイーンとキングをペアペアに並べる。
これは面白い!アンチオイルアンドウォーターとロイヤルマリッジのプロットを、シンプルな操作だけで同時に実現しているような感じです。
実際に手を動かしてやってみると、綺麗に現象が起こって楽しいです。
26.Families
絵札12枚とジョーカーを使って、同じスートの組み合わせを作っていく。
「25.Misleading」のロイヤルファミリー版という感じですが、こちらは操作がゴチャゴチャしていてあまり面白くないです。
27.Long Distance Surprise
6枚のカードを使って、客の選んだカードを客自身が見つけ出す。
電話で演じるリモートのスペリングトリックという試みで、指示がシンプルになるよう配慮されている感じが勉強になります。
28.Sixpack
2種類のスートのカード数枚ずつで、メイトカードをどんどんペアにしていく。
途中までまあまあ良かったけれども、どんどんどんどんゴチャゴチャしていって後半はもう大変なことになっています。
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