レビュー『喪男コインマジックⅡ』

みやもとさん著『喪男コインマジックⅡ』のレビューです。

以前にレビューした『喪男 COIN MAGIC』の続編みたいです。

今回はなんと、コインマジックがあります。

マジックマーケットオンライン2020の商品で、みやもとさんのご好意で読ませて頂きました。

実は最後まで、谷英樹さんの『POEM』とどちらを先にレビューしようか悩んだ作品集です。マジックマーケットのダウンロードコンテンツでの個人的ベスト商品をまず最初にレビューしようと思っていたので。

1.Re:Any Nose Shot

前作収録の Any Nose Shot の追加アイデアと、練習などのコツです。

追加アイデアはとても面白く、やんややんやと拍手を送りたい内容です。

コツについては本当にどうかしてるというか、本気で言っているのか？？と思う内容なのですが、いやでも、このコツを押さえればきっとできるようになる？私も鼻ティッシュマンになれる？？と思ってしまいます。

なれるのでしょうか。なれると良いですね。習得できれば最高ですが、難しい手品です。

2.Naked Coin Production

本田八夏氏の No Card Palm をマンモスコインで、そして全裸でやった感じ。

などと言うと怒られそう。

3.Naked Miser’s Dream

全裸で演じるマイザーズドリームです。

これは非常に良いです。サトルティも利いていて、クライマックスもあります。

演じる環境に制約が有りそうですが、板付き・完全暗転・道具処理が可能で、全裸が許されるなら最高のパフォーマンスのひとつだと思います。

4.Naked Prediction

ポーズの予言です。スロットみたいな感じです。

解説を読んで、ちょっとやりたいなと思いました。

簡単で、手品初心者でもできると思います。

↓ここから長いです↓

5.END OF THIS WORLD

これを読んで、マジックマーケットのダウンロードベストが、この作品集か『POEM』か悩みました。

そのくらい、名作です。

手品を開始してからいかに長時間「何もしない」かを考えたことがあります。

これには2種類あって、ひとつは「何もしていないように見えて、実は手品が始まっている」というもの。

もうひとつは「手品が始まっているように見えて、実は何もしていない」というもの。

前者は非常に良いアプローチです。私の大好きなロン・ウィルソン氏のウルトラメンタルの手順は、手品がこれから始まるのだなあと思っていたら急に終わるという、意表を突いた構成になっています。「何もしない」という空気が綺麗に機能している好例だと思います。

また、こちらも大好きなこざわまさゆき氏の作品で、手品の前段に長々と「ジジ抜き」の説明をするというものがあります。『Seeds & Gimmicks』収録の「Old Maid’s Piano」という作品で、だらだらと説明をして、まだ手品が始まらないのかなあと思っていたら、実はすべて手品だったという構成で、これも最高に綺麗な名作です。

後者だと、これまた大好きなビル・マローン氏のジョークで、1枚のカードを当てる流れなのに全然手品していないというものがあります。

これと、またまた私の大好きな和泉圭佑氏が演じていたパワーフォースのジョークで、観客にカードを選ばせないというものがあって、これらに影響されて私も、いかに手品をしないかということを考え、アレンジした手順をレパートリーにも入れています。

「END OF THIS WORLD」は、分類で言うと後者の「手品が始まっているように見えて、実は何もしていない」ものですが、先ほど挙げた名作を凌駕するレベルで、何もしません。

これには感動しました。かなり長時間、手品をしそうな雰囲気なのに、何もしていないのです。

なんなら、手品をしているような雰囲気を出すための工夫まで書かれています。徹底的です。

そして、こういったアプローチは最終的にジョークとして昇華されがちなのですが、この作品はそういう範疇を超えて、常識を弁えていません。とても無礼です。

ノックアウトさせられました。完璧な手順です。

ただ、『POEM』とどちらを個人的ベスト手品にするかなあと悩んだときに、気づきました。

「END OF THIS WORLD」は、手品じゃないんです。

何もしていません。なんで悩んでたんだろう。

購入できる機会があるのであれば、ぜひこの作品だけでも読んでみて欲しいです。

この話題を共有できる人が増えて欲しい。

というわけで、みやもとさん著『喪男コインマジックⅡ』のレビューでした。

『POEM』の話をちょいちょい交えてしまいまして、『POEM』考案者の谷英樹さんには心よりお詫び申し上げます。