マジケ2022秋【ルーンの帽子】「APPARATUS Vol.Ⅰ」のレビューです。
奇術研究家の鍛冶中さん(ルーンさん)による作品集です。ある本の後書きにお名前が出てきたときに、奇術研究家と紹介されていたような気がします。
縁あって読ませて頂きましたのでレビューします。
セルフワーキングっぽい手品が多め(というかほとんど)で、基本的には読めばそんなに手間なくレパートリーにできるくらいシンプルな作品で構成されています。
以下、載っている作品をひとつずつレビューしていきます。
・Remote Dealing
リモートで演じるカード当てです。
カードはお客さんの手元にあるという状況設定で、所謂ラジオで演じるマジックの類なので、視聴者全員が参加できます。
100%全員が上手くいくとは限らないのでは?という手順なのですが、その部分については補足で著者の考えが書かれていて、なるほどそういう考え方もあるのかと勉強になりました。
このご時世、リモート環境で演じる手品はひとつ持っておいて損はないと思うので、知っておくと良い作品だと思いました。
・馴れ初め
カップルに演じるセルフワーキングトリックです。
原案として、ある有名な原理を利用した作品だと書かれています。その通りなのですが、それよりもReflection Problem と呼ばれる原理(サイ〇〇〇〇〇〇ックはク〇〇〇〇〇〇〇〇フルでス〇〇〇〇ックになる)を上手く使った作品で、ク〇〇〇〇〇〇〇〇フルは本来ものすごく不自然に見える動きを含むのですが、そこを演出の中で上手く回避して自然に見せているのが良いと思いました。
また、手順の最初に本来ものすごく不自然に見える配り方があるのですが、これも演出でかなり自然に見えるよう工夫されています。
既存の原理をうまく組み合わせて綺麗な作品として仕上げた秀作です。
ところが、この手順だと上手くいかない(数理的に破綻する)ケースがあるのでは?と思いまして、著者に確認したところやはりそのようなケースがあり得るそうです。
この点は、次回Vol.Ⅱで改訂案の発表があることに期待します!
・Clockwork
古典的なクロックワークのトリックの、ごちゃごちゃする部分をシンプルにしたアイデアです。
この方法はメリットが結構多くあって、状況によってはアリだなと思いました。
・ESPresso
ある有名な原理を使った作品で、基本的には既存の手順なのですが、それを退屈にさせない、そしてクライマックスを盛り上げるアイデアが紹介されています。
確かに元になる手順はそのまま演じるとかなり退屈なので、このアレンジは良いですね。脚注で参考にされているテレビ番組を私も見ましたが、退屈な手続きだったと記憶しています。
知っておくと役に立ちそうなので、覚えておこうと思いました。
・相即不離
ESPressoと同じ原理を利用した、イラストカードのマジックです。と言っても、演出だけ変えただけとかではなく、違う手品です。
対になるイラストを利用した楽しい作品で、補足で対になる関係性が適切かどうかに関する考えが書かれています。この部分について私は、むしろ気にすべきは他の組み合わせが可能かどうかだと思い、色々考えてみたのですが、トイレの水を飲んだりコンセントに異物を突っ込んだりしたので、なるほどこの組み合わせがベストだなと思いました。
・Nengraphy
カメラをモチーフにしたオシャレな作品です。この作品だけ、技術的にいくつかやることがあります。
補足にある追加アイデアが面白く、カメラのイメージをいかに想像させるかという部分に妥協がありません。
何かに見立てる作品を作るとき、そのイメージをどの程度お客さんの想像力に任せるのかというのは大事なことだと思うので、参考になりました。
マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。
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