マジックマーケット2021春にて頒布された、東北大学クロマドウ会ブース「Ethanol -Selection-」のレビューです。
新作と旧作あわせて正味20個の作品が載っていながら500円というニコニコダンピング価格で安心して買えました。
ふざけていると聞いていたのでもっとふざけているのかと思ったら、結構しっかりした手品も載っていて驚きました。
なんせ20個も載っているため、すべての作品のレビューを書くのはなかなか厳しいのですが、すべての作品のレビューを書こうと思います。
なお、都合上、現象の説明は五七五で行います。
旧作編
MISSTIC SPLIT (Mizuki Satoh)
【まちがった 空手の極み ここにあり】
ラファエル・ベネターの「Karate」がこんな感じで、カードにチョップして分裂する現象にオチが付いているものでしたね。
こちらは一回いらんことをするバリエーションです。おもしろいです。
ふつうカードにアチョーする手品は単にジョークで終わるのに対し、これはちゃんと不思議で良いんじゃないかなと思いました。
Triangle Assembly (seven_magica)
【おしゃれだね 大きな声と 三角形】
大きな声を出す手品ですね。
3枚同時に移動させるために三角形を作るとだけ聞くと、面白いアイデアだなと思うのですが、実際見るとああ三角形ってそういう、って感じです。
むかしムーに載ってたって言われたら信じそうです。
カード・スルー・ザ・紙コップ (K.Takakuri)
【どっちかな 異次元空間 ちからわざ】
紙コップという身の回りで手に入るものを使っていて、しかも使い捨てではないみたいでエコです。
消えるバージョンがもとで、貫通は後から出てきたバリエーションらしいですが、消えるのもたいへん良いと思います。
スピーディーかつマッシブにこなせば、ビジュアルに現象が伝わりそうです。
Minesweeper (seven_magica)
【トランプで 地雷探しも お手のもの】
理論的な構成をすればこうも上手い手順が出来上がるものなのだなと感心しました。
一体どんなしくみがどう作用して噛み合っているのか分かりませんが、上手く行くっていうのは良いことだと思います。
シャッフルの原理の使い方が賢いです。
(hotaS ikuziM) HPMUIRT
【ねだ品手 ばれ見にさ逆 てし画録】
逆再生したら手品になるっていうのは手品じゃなくて特撮っていうんですよ。
昔、特撮ヒーローで怪人とかが水の中から突然登場するシーンは、トォーッ!と出てくるポーズで足から水にボチャンと落ちていくのを撮って、逆再生してたんですよね。
だから何かが水の中から登場すると、決まって波紋が中心に向かって収束するんです。
私が初めてそれに気づいたのは、超神ビビューンだったかと思います。
超神ビビューンっていうのは、アクマイザー3の続編です。
Deus Ex Machina (Hiroshi Munakata)
【便利だね 文字を並べて 後始末】
トランプのすべてのカードを使って仰々しい作品を仕上げるというのはあるのですが、どこかに苦しさが残りがちです。
その点こちらはアルファベットのカードで、しかも必要な分しか使わないので苦しさがなくて清々しいです。
クライマックスはきちんと劇的なので、これはこれで完成された手品と言って良いと思いました。
Gambler's Collectors (Mizuki Satoh)
【理論上 完全無欠 理論上】
作者がこの世にオギャーと生まれ、すくすくと育っていく中で一番最初に考えた手品だそうです。初々しいですね。
カードマジックにハマり始めた人が考えそうな雰囲気ではあるのですが、所々とてもユニークな着眼点があって、まだまだ色々な方向に広げられそうな作品だと思いました。
VIP Reset (seven_magica)
【入れ替わる 見えないものと 見えるもの】
見えないカードという演出は時に手法として便利だったり、既存のものとは違う印象を持たせるのに使われたりするのですが、なんせ見えない分お客さんへのプレゼンテーションが難しいです。
これは、プロットとしてめちゃめちゃ面白いです。普通にアリというか、良作だと思いました。
ただ書かれているように、確かにラストが、体のどこかに皮膚を増設して一時的に有袋類にでもならないと厳しそうな感じがありました。
そんなことは書かれていませんでしたが、なんとか上手くやって実現出来たら素敵だなと思いました。
BINGO PARTY (seven_magica)
【おめでとう! あなたのビンゴ 大当たり】
これはきっちり不思議ですし、とても面白いです。
何よりビンゴという場面設定が楽しく、ウキウキしながら見れそうな手品ですね。
完成までに紆余曲折があったそうですが、完成してよかったねえ!と作者を抱きしめたくなりますね。
Ambiguous Card (Hiroshi Munakata)
【何度でも 指を鳴らせば ほら上に】
これを読んで寝たせいで変な夢を見ました。
手品ではないのですが、結構面白いし、印象に残ると思います。
こういうのをアンチテジナというそうですが、アンチテジナについてはこの後に「補足 アンチテジナ発達史」と題してくやしく書かれています。
新作編
The Tragedy of Q (beevalley8)
【初歩的な 推理で決まる 唯一解】
心理戦を含むデスゲームのような空気で進行するカード当てで、お客さんがなんとなく「してやられた」と感じるような演出が面白いです。
本の中での構成も凝っていて、読者への挑戦状のあと「解決編」が別に載っています。
手品としても読み物としても楽しいです。
世界で一番早いカードアンダーザボックス (Hiroshi Munakata)
【世界一 光に迫る 超高速】
これは早いです。本当に早い。
早いので尺がもたないのですが、面白いです。
ちゃんと手品で、うまく扱えば戦力として演技に取り入れられると思います。
世界で一番賢いトリック (Mizuki Satoh)
【ひっそりと 何かが起きて いるのかな】
結果としては何も起きていないのですが、きちんと手品として成立していると思ってしまいます。
例えばセルフワーキングの手品には、最初のセットなどお客さんの見えない部分というのが存在したりしますが、この手品はそれすら無いので、つまるところ何も起きていないのですが、それだけ何も起きていないのが逆に面白いです。
セルフワーキングではないものの、技術的には簡単で、なんならレパートリーに入れようかなと思いました。
アルティメット・アミダ・アセンブリ (Mizuki Sato)
【一瞬で 4つのマーク 大集合】
この作品集の中での個人的ベストです。
手品ではないし、不思議でもないのですが、マークが集まってうれしかったです。
Angel's Escalator (seven_magica)
【難易度が 下がるといって 出し抜いた】
普通にちゃんとしたDevil's Elevator の改案です。
予想外のクライマックスが心地よく、手順自体はシンプルで、またラストのフォーエースは見た目にも分かりやすいです。
良い手品ですね。
轟盲札 (seven_magica)
【トランプの 表面削り ブランクに】
ビジュアル一発おもしろい現象です。
不自然なムーブを演出と力業で解決しているのはすごいです。
いい感じにマジシャンが魔法使いではなく狂人に仕立て上げられているので、最後に選んだカードに変わるところも何か力業っぽく、例えばマジシャンが「頭にさっきのカードを思い浮かべて念写する」などと言って、カードに頭突きをしつつ頭をテーブルに打ち付けるなどすれば良いかと思いました。
No Wonder Transposition (Hiroshi Munakata)
【色違い 入れ替わったの お前だけ】
ラショーモン!
何がしたいのか分からなかったのですが、じっくり読んでみると、なるほどなあという感じです。
この道具が持つ独特の怪しさが、この演技が持つ何がしたいのか分からなさとマッチして、究極に怖いと思います。
よく思いついたなすごいなとも思いますが、怖いです。
Any Hz at Any Hole (Mizuki Sato)
【どの音も お好きな穴で ピーヒョロロ】
めちゃくちゃ不思議なんですが、ハードルが高いです。
特に、楽器が好きな人にとっては耐えがたい苦痛だと思います。
例えば「準備として市松人形を買ってきて首をノコギリで落としてください」と言われれば、抵抗を感じる人が多いと思います。
本当にこの作者は「カード当てのある生活」を書いたMizuki Satoh さんなのか?と思ったのですが、これとアルティメット・アミダ・アセンブリはMizuki Sato さんなのですね。
実は2人いる疑惑に信憑性が生まれました。
Hand-Rub Vanish (Hiroshi Munakata)
【寒そうに ゴシゴシしてる だけですね】
動画拝見しました。
消えてる?消えてない?
んー……消えてる!!
幻聴 (Mizuki Satoh)
【 】
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