2013年5月22日水曜日

レビュー「東北地方太平洋地震チャリティーレクチャーノート」


東北地方太平洋地震チャリティーレクチャーノートの感想です。



「はじめに」ポール・クリテリ氏



これは英語版が原版で、日本語版が邦訳と見て良いのかな?
日本語版を読むと非常に嬉しいことを言ってくださっていたので、ついつい英語版を読んでしまいました。
こういうメッセージって、なんだかやっぱりそのままの言葉を受け取りたかったので。
でも、氏の言葉を英語で、他のを日本語で読んでしまうと、和泉さんがせっかくなさった翻訳の仕事を無視している気がして申し訳ないです。
せっかく2ヶ国語版セットでの販売だったので、両方じっくり読みたいなと思います。


「ブイトール」日向大祐氏



氏のサンドイッチエフェクトです。
すごく面白いです。広い範囲の人にとって実用的な手順だなと思います。
足すことも引くことも許されない完成された手順でありながら、1つの大きなアクトの中にも容易に組み込むことができると思います。
バリエーションが数多く解説されているのも魅力で、好みの方法、好みの難易度が選べます。
こんな実用的な手順にめぐり逢う機会はなかなかに稀ですね。
そこまで難しい技法を使うワケでもないので、とりあえず練習しておくことで自分の財産にできる手順です。

「再興サイコ」浅田悠介氏


厚川昌男氏の「サイコ」の改案です。
ちょっと文章が読みにくいかな……デリケートな現象である以上、図があるともっと分かりやすいだろうなと思いますが、時間が無い中での寄稿ですから仕方ない部分なのかもしれません。
個人的にはあまり面白いとは思いませんでした。でも、ハマれば面白いんだろうなと感じました。
原案とどこが違うのか説明されているのは、この手順がどんなコンセプトで生み出されたのかが分かって良いと思います。でも、その説明だけだと常に厚川氏の「サイコ」がとっても面白いという前提で話が進んでいきます。そもそも原案があまり面白いと思えない私にとっては魅力が感じられません。
厚川氏の「サイコ」ではなく、浅田氏の「再興サイコ」の魅力、この手品がどう面白いのかを説明してほしいなと感じました。

他にも、細々としたツッコミどころがいくつかあります。別に批判するつもりも能書きをたれるつもりもなく、単純に「ここおかしいんじゃないかな?」っていう点です。


「アニバーサリー・ミニマル」こざわまさゆき氏


ドク・イーソン氏の「アニバーサリー・ワルツ」の改案です。
キレイな手順だと感じます。誰にでもできる、まさに極小のアニバーサリー・ワルツだと感じました。
学生のステージ演者や若手アマチュアマジシャンの流れを見るに、最近は「個性」や「独創性」が重視され、他の人にはマネできないマジックがなかなかの評価を集めつつ有る時代になってきたなと感じています。
そんな中、演技を自分の中で閉じずに考えられた誰でもできる有用なマジックと言うと、'あの時代'の有志が時代を引っ張ってきました。
たなかまさのぶさん、Beeさん、松田さん(のじまきさん)、トヒデルアルデヒドさん……

今、時代は確実に変わってきています。私より下の世代にとってこの手順がどう受け取られるかと考えると、高い評価は決して得られないでしょう。「これぐらい考えつく。」って思われそうです。しかし、その「考えつく」ようなアマチュアマジシャンの思考回路の基盤を作ったのは'あの時代'だと思います。
'あの時代'に憧れながら育ってきた私にとって、この作品の感想は率直に「嬉しい」です。

「3.5」大原正樹氏


正直、文章を読んでもあまり追えないコインの手順です。
多くを語るより、氏のブログ「大原のおすすめ」で動画が公開されているので、見てみると良いと思います。
私は色々な事情が有ってこの手順はやらないのですが、すごく洗練された手順だなと感じました。
動画を見た感じでは、私にとってはあんまり好きな感じのマジックではなかったのですが、レクチャーノートでは要所要所で紹介されている「考え方」や「見方」がすべて勉強になります。

動画を見て「すごい!でも難しそう……」って感じた方は、ぜひレクチャーノートを買いましょう。
決して難しくないですし、それなりに練習すれば充分できるようになると思います。
特に、演技を見て感銘を受けた方なら必ずペットトリックにできるはずです。
動画がべらぼうに上手いので超絶技巧を使ってると錯覚してしまいそうですが、実は非常に実用的な手品です。

「リバース・ヘイルストーン」小林洋介氏



ポール・ウィルソン氏の「ヘイルストーン」の改案です。
ヘイルストーンが面白いという前提で話が進みます。私の場合はヘイルストーンが(というか、ポール・ウィルソン氏の手順が全体的に)好きなので問題ないです。ヘイルストーン嫌いな人にとってどうなのかは気になるところです。
全体的に読みやすいです。ついついカードとってきて順を追ってやりたくなるような手順です。
この手順を見て強烈なインパクトを感じたワケではないですが、安定して面白い手順だと思います。
ただ、ほとんどヘイルストーンなので、これは発表して良いのかな……とは素朴に思います。その辺の事情はよく知りませんが。

「焼肉カード」さとる氏



まず言いたいこととして、氏はこれを提供しちゃってマジシャンとして食いっぱぐれないのかと。
良いんですか?これ、やりますよ?書いてあるTIPSも存分に活かしちゃいますよ?こんなしがないアマチュアに、こんな秘密を公開しちゃって大丈夫なんですか?
……きっと大丈夫なんでしょうね。「手品のサイトといえば?」ときけば頭3つには入るであろう「びっくり箱」管理人のさとる氏の作品です。
すごいです。役に立ちます。このためだけにレクチャーノート買っても損は無いレベルです。
もしこの作品を読んで何も得られない後輩が居たら、ちょっと滝にでも打たれてこいって言いたいレベルです。

かつてチャレンジャーズライブのフィードバックで、私も氏から色々ためになるアドバイスを頂きました。次の時代の重鎮でありながら若手の育成にも力を注ぐ氏に感謝しながら、もっと努力していきたいと思います。

~最後に~



編集の和泉氏。
こんな素晴らしい作品集を短期間で世に送り出したことにもはや頭が上がりません。
なんというか、この仕事量は異常だと思います。
チャリティーの性質上、期間限定販売なのが惜しいところです。
復活販売、なんてのはなかなか難しいでしょうし、今のうちに買っておくに越したことはないと思います。
氏はこれで一躍時の人となりましたが、まだまだ若手の底上げに貢献していくことでしょう。
私もまだまだこれからお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。

一言でいうならこの作品集は
「ちょっとしたStars of MAGIC」
ですね。

*注
現在購入することはできません。

0 件のコメント:

コメントを投稿