マジックマーケット2023春【うぇる@えひめ】『wel_done_5』のレビューです。
パワー系マジシャンうぇるさんの新刊作品集、シリーズ第5弾です。
これまでのシリーズで私の一押しは『wel_done_3』だったのですが、今回で更新されました。
うぇるさんのやつをどれか1つだけ買ってみようという方は、この『wel_done_5』で間違いないと思います。
そのくらいの傑作集です。
収録作品を1つずつレビューしていきます。
・aircoin drop
見えないコインを落としてしまい、チャリンと音がします。
音のアイデアはもちろん面白いのですが、途中の手順もクリーンで、見えないコインの存在に説得力があります。
コインの処理というかコインの状態の解釈も手順全体で一貫していて、完成させられたアクトになっています。
もちろん他の手順にも応用できる、賢い手法です。
・Rhythm production
リズミカルに4枚の絵札を取り出すプロダクションです。
肝になる技法の解説が丁寧で嬉しいです。上手い……
プロダクション自体はパワー系ではなく、じっくり練習すれば誰でも習得できると思います。
カジュアルに手遊びのつもりで練習できる、楽しい手順ですね。
・Another Cherry Control
カードのコントロールの手法です。
最初は「はいはいパワーパワー」と思ったのですが、解説を見て「本当にこんな動きになるの!?」と思い、すぐカードを触り始めてしまいました。
実際にやってみると、本当にそういう動きになって驚きました。
演者の骨格やカードの質にはほとんど依存しないと思います。かなり堅固なメカニズムっぽいです。
実用レベルまで習得するのは簡単ではないと思いますが、思ったよりパワー系ではなく、むしろ賢い技法です。
・Card to Box
Another Cherry Control を利用したカードトゥボックスの手順です。
これはまあパワーですが、先述の通りAnother Cherry Control 自体がそこまでパワーではないので、無理なく応用できる範囲の作品だと思います。
Another Cherry Control の練習手順としても有用です。
・edit
フェイドアウトエーセスの改案です。
これはすごい!面白い!
道具立てが賢いなあと思いながら見始めたのですが、もう最後までずっと面白いです。
パワー系かというと、技術的に簡単ではない部分を含むというだけで、むしろ賢さのほうが際立っている印象を受けました。
自分ならちょっと変えるかな、という部分(と言ってもジェスチャー程度)もありますが、良い作品ほどそんな考えが膨らむものですよね。
文句なし。歴史に残るべき名作です。
全体として、どうせ技法でぶん殴るだけだろうと思っていたら、構成の上手さや道具立ての工夫がしっかりしつつ技法もちゃんと使う、完成された賢い手品の作品集でした。
マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。
シリーズのバックナンバーも全て再販されていますので、ブースのページをチェックしてみてください。
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