2023年5月3日水曜日

レビュー『orange』

マジケ2023春【果無園】『orange』のレビューです。

園内五果さんのフルーツシリーズ最新刊で、一旦これが最終巻だそうです。
脈絡なく最後にロイヤルストレートフラッシュが出てくる手品が載っており、私の『で、これがロイヤルストレートフラッシュ』を参考にしてくださったそうです。

そういうことで、一足お先に読ませていただきました。
載っている作品をひとつずつレビューしていきます。

1.Fake Faces
せぶんさんの「Miss Reset」のアレンジで、所謂リセットのプロットに自然な流れで設定の説得力を付けた感じの手順です。
原案と比べると演じるテンポが速い印象です。どちらが良いかと言われると難しいところで、急ぐ部分とじっくり見せる部分が異なっているというだけで、どちらも良い作品だと思います。

2.Magical Triple Control Light
著者の前著の作品「Magical Triple Control」を易しくした別案だそうで、バーノンのMatching the Cards 的な手順です。
これは面白い!確かに使われる手順が簡単で、やってみようと思えます。
間の取り方に気を付けないと変化現象ではなく本当にもう1回やっているだけにも見えそうですが、考えてみればそれはそれで別に問題はないですね。
最初読んだときセットが1枚不要な気がしたのですが、なるほど脚注で何に使っているのか分かりました。
細部まで練られた良い手順です。

↓ここから様子がおかしいです↓

3.Comedy of Successes
バーノンのMatching the Cards 的な手順で、ロイヤルストレートフラッシュが出てきます。なぜ。
最後の1枚の見せ方がとても好みです。
演者は本当のことしか言っていないのに、めっちゃ嘘ついてるみたいに見えてしまうので、これはカードマジックの果てに到達していると思います。

4.Illusory MTC
バーノンのMatching the Cards 的な手順で、ロイヤルストレートフラッシュが出てきます。えっ。
徹底して本当のことしか言っていないので、逆に詐欺師のような風格があります。

5.Skinks vs. Snakes
著者の過去作「Shingleback Skinks」の最後にロイヤルストレートフラッシュが出てきます。
単純にロイヤルストレートフラッシュをくっつけただけっぽく書かれていますが、結構綺麗にクライマックスになっていると思いました。
ロイヤルストレートフラッシュのせいで全てが予定調和に見えるっちゃ見えるのですが、これは蛇足ではなく上手に伏線を回収していると言えるのではないでしょうか。
読みながら手を動かしてみて、思わず「おおっ」と言ってしまうくらい、現象がポンポン起きるのが心地良い作品です。

全体として、前半は普通に良いです。
後半はふざけている感じを装っていますが、嘘をつかない賢さと、脈絡のなさを蛇足にしない構成力が勉強になる良い作品集でした。

マジックマーケットの期間中、オンラインのショップページで買うことができます。
実は過去の作品集を全然持っていないので、ぜひ過去作も電子版とかで再販して欲しいですね。

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